前回は、共有名義不動産における「維持管理費」の取り扱いについて紹介しました。今回は、単独所有と比較した場合の「共有名義不動産」のメリット・デメリットについて見ていきます。

夫婦で購入すれば「節税効果は2倍」に

ここで、単独で不動産を所有する場合と比較して、共有名義不動産にはどのようなメリットやデメリットがあるのかをまとめてみましょう。まず、メリットとしては、以下のような点があげられます。

 

①不動産の購入費用が安くなる

 

1000万円の土地を1人で買えば全額を負担しなければなりませんが、2人で買えば1人500万円の負担で済みます。なお、複数人で不動産を買う場合は、自己資金・住宅ローン借入金も含めて、実際の負担額割合にあわせて持分登記をしておかないと、贈与として課税されることがあるので注意が必要です。

 

②夫婦で購入する場合には住宅ローン等が有利になる

 

夫婦の収入を合算できるため、借りられる住宅ローンの額が多くなります。また、住宅ローン減税の適用も2人で受けられるので節税効果が2倍になります。

 

③不動産を売却した際に、3000万円の特別控除を複数で受けられる

 

不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課されることになりますが、所定の条件を満たせば3000万円の特別控除を受けられます。共同購入した居住用財産を売却した際には、共有者各人ごとの譲渡所得について、それぞれ最大3000万円を控除できます。

共有者の収入によっては「贈与税」が課せられる場合も

一方、デメリットには以下のようなものがあります。

 

①共有者の承諾を得ずに全体を売却することができない

 

不動産を売却するためには、共有名義になっている全員分の署名・押印が必要になってしまいます。持分割合が9割以上の共有者であっても、不動産を自分だけの判断で売却することはできません。

 

②離婚した場合、売らなくてはいけなくなる可能性が高い

 

夫婦で不動産を共有している状態で離婚する場合、不動産を2つに割って住むことはできないので、結果として共有名義不動産を売却しなければならなくなります。

 

③登記等の諸費用が余分にかかる

 

単独で所有する場合、登記費用は1人分で済みますが、共有の場合には共有者の人数分だけかかってしまいます。住宅ローンを利用する際にも、そのためにかかる諸費用は人数分だけ必要になるのが普通です。

 

④共有者の収入状況によっては贈与税が課される可能性がある

 

不動産を複数人のローンで購入し共有しているケースで、1人の共有者の収入がなくなるようなことがあると、収入のある共有者が他の共有者の分も住宅ローンを払わざるを得なくなるかもしれません。そのような場合には、代わりにローンを支払ったことが他の共有者への贈与とみなされ、贈与税の対象となることがあります。

 

このように共有名義不動産にはメリットもあれば、デメリットもあります。メリットのうち、購入費用が安くなることは魅力的ですが、他方で、共有者の承諾を得ずに全体を売却することができないのは非常に大きな制約だといえます。

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    本連載は、2017年5月26日刊行の書籍『あぶない!! 共有名義不動産』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    あぶない!! 共有名義不動産

    あぶない!! 共有名義不動産

    松原 昌洙

    幻冬舎メディアコンサルティング

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