今回は、税務調査で売上・原価・人件費・特別損益が狙われる理由を見ていきます。※本連載は、元国税調査官の税理士で、顧問業務のほか税務調査対策等のコンサルティングを行う松嶋洋氏の著書、『<押せば意外に>税務署なんて怖くない』(かんき出版)より一部を抜粋し、具体的な税務調査対策を紹介します。

税務調査のポイントは4つだけ!?

税務調査はおおざっぱ、と申し上げましたが、元調査官の立場からすると、税務調査のポイントというのは、売上・原価・人件費・特別損益(計上されていれば)の4つだけと言っても過言ではありません。

 

税務調査は税金を取るために行われています。このため、少ない労力で最大限の成果を上げるためには、どうしても金額の大きな項目を中心にチェックをかける必要があります。こういう意味で、会社において金額が大きい、前述した4つの科目に的を絞り、それを深く検討するというスタンスで税務調査を行っています。

 

元調査官の経験から言いますが、税理士の関与があったとしても、税務調査で狙われるこれらの項目はかなりガードが緩いです。調査官時代は、狙われるポイントは明確なのだから、金額の小さい科目は別にして、売上等の税務調査で狙われる項目を、きちんと税理士はガードすればいいのに、などと考えていました。

 

繰り返しになりますが、交際費や減価償却費など、金額は大きくないものの、税務雑誌で取り上げられるような、税務上重要とされている科目については、その実甘い処理をしていたとしても、税務署としてはほとんど問題にしません。

 

むしろ、こういう科目に目を向ける調査官は、時間の使い方が悪いと注意を受けるケースもあります。

調査官は効果の高い項目を中心にチェックする

交際費や減価償却費などが問題になる会社は、売上等では攻めようがない会社、言い換えれば経理水準が極めて高い会社です。

 

このような会社は、経営判断のため、正確な原価計算を行っていることが多いです。正確な原価計算を行うということは、売上と原価をそれぞれ対応させて管理していることを意味しますので、売上や原価といった税務調査の主要項目からは、間違いを発見することが非常に難しいのです。

 

こうした原価計算ができるのであれば、どの会社も実施したいと思っていることでしょう。しかしながら、このような計算を行おうとすると、膨大なコストがかかりますので、ほとんどの会社は実践できていません。いわゆる、どんぶり勘定で処理しているのです。

 

ということで、ほとんどの税務調査においては、売上や原価を攻めるだけで調査官は十分な税金を追徴できます。となれば、その他の項目は別にチェックをかけなくてもいいため調査官は見る必要が基本的にはない、という結論になるのです。

 

調査官と税理士の経理処理に対する重点の置き方は、かなり大きな差があります。森を見て木をほとんど見ない調査官と、木をしっかり見るあまり、森を見きれない税理士。

 

税の専門家ではない経営者が税務調査対策を考える場合、単に税理士任せにするのではなく、この相違に注意して、適切な対応を取る必要があります。

 

<POINT>

調査官は金額の大きな4つの項目だけに的を絞っている

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