税務調査官が勝手に自社の倉庫に・・・どう対応する?

今回は、税務調査官が承諾なく倉庫に入室したような場合、どう対応すべきかを見ていきます。※本連載は、元国税調査官の税理士で、顧問業務のほか税務調査対策等のコンサルティングを行う松嶋洋氏の著書、『<押せば意外に>税務署なんて怖くない』(かんき出版)より一部を抜粋し、具体的な税務調査対策を紹介します。

調査官を入室させる=税務調査を受け入れる

調査官の税務調査の進め方が問題にならない要件である、納税者の承諾には「黙示の承諾」も含まれることになりますが、この点について興味深い裁判例があります。

 

この裁判は無予告調査を実施した税務調査に対し、明確な承諾なく調査官が倉庫に入室したことの是非、そして明確な承諾なく、倉庫の中をデジカメで撮影した行為の是非が問われたものです。

 

この裁判では、倉庫に入室したことは合法、デジカメで撮影したことは違法と判断されています。

 

倉庫の入室が合法となったのは、倉庫の管理者である従業員が、調査官の倉庫への入室に対して明確に抗議しなかったことが「黙示の承諾」に当たるとされたからです。無予告調査の場合、調査官は納税者の承諾を得るため、現場の従業員に「至急社長に電話連絡を取ってほしい」と申し出ます。

 

従業員としては、変なリスクを背負いたくないこともあって、調査官を入室させた上で社長に電話連絡することがよくあります。しかし、調査官を入室させるということは税務調査を受け入れる、という「黙示の承諾」に当たる可能性があるわけで、無予告調査を延期したいのであれば、調査官を入室させてはいけないのです。

 

従業員は経営者や税理士以上に税務署に恐怖感を持っていますから、「無予告調査の場合には、調査官を入室させることなく税理士に連絡する」ことを、きちんと伝えておく必要があります。

承諾なしに税務調査を行うのは、本来違法

一方で、この裁判では倉庫内をデジカメで撮影したことは違法とされています。

 

デジカメの撮影は倉庫に入室しても、撮影許可を得なければできないものですから、調査官との電話応対で、納税者(社長)が無予告調査にひどく抗議していることを踏まえれば、納税者がデジカメ撮影を「承諾」したとは到底考えられず、黙示の承諾に該当しないとされたからです。

 

本判決では、調査官が承諾を求めた以上の税務調査を、承諾なく行えば基本的には違法になる、と判断されていますので、行き過ぎた税務調査に抗議するためには、どこまでのチェックを調査官が求めているのか、逐一確認をとる必要があるということになります。

 

このように確認した上で、調査官が求めた範囲以上の税務調査を実施しようとする場合には、その都度「承諾」が必要であると主張し、簡単には余計な税務調査を実施できないよう、緊張感を持って調査官に対応する必要があるのです。

 

調査官に余計なことをさせない、と申し上げると、税務調査を妨害するといった印象を持たれる方も多いと思います。

 

たしかに、このような対応をすれば調査官の印象はよくはありませんが、当の調査官も、税務調査のときにはあえて税理士に資料のコピーや資料作成をさせる、といった形で、税理士に余計な抗議をされないように措置していることが通例です。

 

税務調査は納税者と調査官の交渉事ですから、このようなテクニックをうまく使うことも重要と考えます。

 

<POINT>

調査官がどこまでのチェックを求めているのか、逐一確認をとる

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連載元国税調査官が教える「税務調査」対策のポイント

元国税調査官
税理士

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。その後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。

現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズ(http://inspireconsulting.co.jp/tax/26kaisei.html)は毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。

著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という100回を超えるコラムを連載中。

<セミナー講師実績の一部>
東京税理士会麻布支部:「税理士が見落としがちな税務の盲点」
九州北部税理士会:「税務調査の実態と調査官の本音」
鳥飼総合法律事務所:「税務調査に強い税理士になるための裁決等事例研究」
アックスコンサルティング:「自社株対策(組織再編とグループ税制の活用)」
アックスコンサルティング:「事業承継税制(平成25年度改正)」
ビズアップ総研:「税務調査対策(事前準備と交渉術)」
インスパイアコンサルティング:「印紙税税務調査対策」
インスパイアコンサルティング:「消費税の基本と実務」
国際物流総合研究所:「経営者が知っておくべき税務調査対策」
大槻Mクラブ:「税務調査の真実と嘘・本当」

コーポレートサイト:松嶋洋.com(http://yo-matsushima.com/)
facebookページ:http://qq3q.biz/nAs6

著者紹介

押せば意外に 税務署なんて怖くない

押せば意外に 税務署なんて怖くない

松嶋 洋

かんき出版

国税OBが教える「税務調査のかわし方」 全国にいる税務署員と税理士に幅広く読まれる税務の専門紙「納税通信」(週刊)の人気連載を書籍化! 「年収の3倍程度は税金を取ってこい」とハッパを掛けられる税務調査官。本筋よりも国…

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