今回は、税務調査官が重点的にチェックしてくる項目について見ていきましょう。※本連載は、元国税調査官の税理士で、顧問業務のほか税務調査対策等のコンサルティングを行う松嶋洋氏の著書、『<押せば意外に>税務署なんて怖くない』(かんき出版)より一部を抜粋し、具体的な税務調査対策を紹介します。

調査官は「木でなく森」に目をつける

税理士に税務調査対策のコンサルティングをする際に思うことですが、税理士は税務調査が非常におおざっぱであることを理解していないため、大きな損をしていると考えています。

 

調査官はあらかじめポイントをいくつかに絞った上で、税務調査を行っているわけですが、そのポイントのいずれか一つでも間違いがあれば、調査官は満足なのです。一方、会社を守る税理士は、経理処理に一つでも間違いがあってはいけません。このため、間違いがないよう、会社の経理について幅広く注意をしています。

 

毎月顧問料を会社から頂戴していますので、間違いがあること自体許されることではありません。細かい部分まで注意することは何ら悪いことではないのですが、元調査官の立場から見ますと、「木を見て森を見ず」という感覚を受けます。

 

以前勤めていた税理士事務所で、資格のない職員からよく聞かれた質問は、交際費や減価償却に関するものでした。この費用は交際費に該当するのか、修繕の支出をしているが、資産計上(※1)せずそのまま経費処理しても問題はないのか、といったことで、税務雑誌のQ&Aなどによく取り上げられている内容です。

 

(※1)資産計上・・・お金を払った段階では経費にならず、いったん貸借対照表の資産に計上させ、その後経費化する処理。

 

こういうことは、「正確な税務処理」には必要なことですが、税務調査において問題になることは多くありません。

「会社の利益にインパクトの大きい」項目をチェック

調査官は、費用対効果の考え方から、交際費などの小さい金額の経費や、減価償却などいったんは課税できても翌年以降で経費とできるものについては、それほど厳しく指導する必要はない、と考えています。

 

調査官時代、はじめて税務調査に行く前に、統括官から言われていたことですが、「2日間という時間で3年間なんか確認できるわけがない」のです。

 

つまり、税務調査の対象となる年分は原則3年ですが、それだけの情報をおおむね2日間の税務調査期間で、すべてチェックすることは無理です。このため、きちんとポイントを絞り、会社の利益にインパクトの大きい項目をチェックする。それが税務調査の実態なのです。

 

税理士として毎月クライアントの経理処理をチェックする立場からすれば、一つひとつの経理処理が合っているか、という細かい視点に立つことが多いです。

 

しかしながら、誤った税務処理が問題になるのが税務調査ですから、税務調査で問題になりやすい項目を重点的にチェックし、それ以外は労力を省くという選択肢も、場合によってはうまく活用する必要があると考えられます。

 

実際のところ、丁寧に会社の面倒をみているという税理士ほど、細かいミスはしないものの、致命的な間違いがあるという印象もあります。人間である以上、ミスはどうしても発生しますので、調査官の視点を踏まえて取捨選択する必要もあります。

 

<POINT>

大きな金額の税務処理にポイントを絞って対策をとろう

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