老齢厚生年金をもらいながら働く場合、収入などに応じて、支給額を調整する「在職老齢年金制度」。この制度により年金が停止となる対象者は、働く高齢者の2割弱になるとか。「一部でももらえないというのは納得できない!」と、疑問の声があがっていますが……みていきましょう。
月収35万円・60代サラリーマン、年金「月5,000円」停止に憤慨も急展開、「日本年金機構からの手紙」に歓喜したワケ

契約社員の60代男性、給料据え置きでも「年金一部停止」→「年金全額支給」のワケ

――まさか、稼ぎすぎで年金減額。たとえ、5,000円でも悔しかった

 

そんな恨み節を投稿していた60代サラリーマン。5,000円ということは、年金と給料を合わせた額が、支給停止調整額を1万円ほど上回ってしまったということ。たったそれだけで、1ヵ月で5,000円、1年だと6万円の年金停止になります。ルールとはいえ、なんとも嫌な気分……男性が恨み辛みを呟くのも当然のことかもしれません。

 

そんなサラリーマンが一転、「年金が全額支給されることになった!」と喜びの声を投稿。日本年金機構から『年金額改定通知書』が届き、年金停止が解除になったことが分かったというのです。

 

ただ契約社員として働き続けている男性、月収は35万円と変わらず、減給となったわけではありません。どういうことかというと、支給停止調整額が変わっただけ。支給停止調整額は以前、60歳以上65歳未満と65歳以降で異なっていましたが、令和4年4月の年金制度改正により、すべて同じ額に改正されていました。この調整額は毎年4月に見直され、令和4年は47万円、令和5年は48万円、令和6年は50万円と推移しています。男性の場合、支給停止調整額が引き上げられたことにより、上限以下となり、晴れて年金は全額支給となった、というわけです。

 

ただ支給停止調整額が引上げとなる一方で、受給する年金額も上がることになります。在職老齢年金の計算においては、給料、年金受給額、調整額、すべて考慮する必要があります。

 

全額支給か、それとも年金停止か。一喜一憂する人も多い「在職老齢年金制度」。本来は「働く人にも一定額の年金を支給するための制度」でした。しかしいまは、「年金がもらえなくなる制度」の一面が強くなり、もらえない年金は4,500億円に膨らんでいるといいます。高齢者の働く意欲を促進させるためにも、制度の見直しや廃止の声が高まっているものの、そのままでは給付が増えるので、給付水準を下げざるを得ない、という専門家も。なんとも悩ましい問題です。

 

[参考資料]

日本年金機構『在職中の年金』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』