長年暮らしたマイホームも、年齢を重ねるにつれて、安心して暮らせる場所とは限らなくなります。家の修繕や管理にかかる費用、日々の生活で感じる不便さ。夫を亡くし、一人暮らしになった高齢者にとって、住まいの維持は切実な問題です。持ち家を手放して賃貸住宅へ移ることに、ためらいを感じる人もいるでしょう。老後の住まいを考えるうえで、何を基準に選べばよいのでしょうか。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「もうダメかもしれない…」50年過ごしたマイホームを手放した〈年金月12万円・78歳女性〉、市営団地に移って気づいた「意外な快適さ」 ※写真はイメージです/PIXTA

夫を亡くし、50年暮らした家で募った不安

「もうダメかもしれない……この家で一人で暮らし続けるのは難しいと思いました」

 

そう話すのは、78歳の高橋和子さん(仮名)です。夫を亡くしてから、一人暮らしを続けてきました。住まいは、結婚後に夫婦で暮らし始めた一戸建て。気がつけば、半世紀を超えていました。

 

子どもたちは独立し、現在の収入は月12万円の年金のみ。住宅ローンはすでにありません。持ち家なのだから、家賃の心配をせずに暮らせる。以前はそう考えていました。しかし、年月とともに家の状態は変わっていきます。屋根や外壁の傷みが気になり、水回りの設備も古くなっていました。修理が必要になっても、年金生活では費用の捻出が簡単ではありません。

 

「このまま住み続けるには、ちゃんとリフォームをしなければならないと思うんですが……この年でしょ。どうしても踏ん切りがつかなくて。不便だ、危険だと思いながらも、時間だけが過ぎていってしまう」

 

一人暮らしとなって10年ほど。年も重ね、広い庭の手入れも、家の掃除もしんどく感じるようになりました。家の段差や、日常のちょっとした作業も、大変だったり危険を感じたりする場面が増えました。夏の暑さも、冬の寒さも気になります。

 

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」では、高齢者のいる世帯の81.6%が持ち家に住んでいます。一方、高齢単身世帯では借家に住む割合が32.2%でした。高齢期には持ち家で暮らす人が多いものの、一人暮らしの高齢者では借家も重要な選択肢になっています。住まいの所有形態だけでなく、維持管理の負担や暮らしやすさも考える必要があるのです。

 

80代を前に、『終活』を意識するようになりました。子どもは2人。相続のことを考えると、家は残さず、売却したほうが何かと楽に感じます。そのような事情も後押しとなり、和子さんは自宅を手放して、住み替えることを考えるようになりました。