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半年後、娘が目にした「想像以上に充実した暮らし」
転居から半年後、麻衣さんが実家を訪ねると、庭には野菜が育ち、居間には孫たちが遊びに来たときの写真が飾られていました。誠さんは家庭菜園を楽しみ、恵子さんは収穫した野菜で料理をしています。
さらに麻衣さんを驚かせたのは、両親に近所の知り合いができていたことでした。自治体の交流会で知り合った移住者とは、買い物先や病院の情報を交換しています。近所に住む人からは、地域の店やごみ出しのルールを教えてもらったそうです。地域の行事にも無理のない範囲で顔を出し、少しずつ付き合いが広がっていました。
「近所の人に何でも頼るわけにはいかないけれど、わからないことを聞ける相手がいるのは心強いよ」
誠さんはそう話します。家の管理についても、使う部屋を中心に掃除し、普段使わない部屋まで毎日きれいにすることにはこだわっていません。負担になる作業は有料サービスを利用しています。「地方といったって、よほど奥地に行かない限り、全国どこでも、東京と同じようなサービスは受けられるものさ」
とはいえ、移住先は基本的に車社会。車があるとないとでは、生活が大きく異なります。それでも、「この辺じゃ乗合タクシーもあるし、買い物は配送もしてくれる。車がなくても意外と暮らしていけそうだよ」と誠さん。免許返納後の生活についても、特に不安に考えることはありません。
さらに万一、健康状態が変わった場合には元の生活圏に戻る選択肢も残しています。
「ずっとここに住めれば一番だけど、無理をしてまで住み続けるつもりはないよ」
想像以上に柔軟に考えている両親をみて、麻衣さんはようやく安心しました。
「思っていたより、ずっと楽しそうでした。『地方暮らしは不便』という先入観が強かったので……」
内閣府『令和5年度高齢社会対策総合調査』によると、高齢期に住み替えの意向を持つ人は約3割(30.4%)。その理由は「健康・体力面の不安」(24.8%)や「住宅の住みづらさ」(18.9%)が中心です。老後の住み替えを成功させるには、医療・買い物の利便性や地域での支え合い、移動手段の確保など、将来の身体機能の変化を見据えた柔軟な生活計画と資金の準備が大切です。