「老後資金はいくら必要か?」という問題は、「老後をどこで暮らすのか?」ということと深く関係しています。老後の住居選びでは、家賃だけでなく「その場所で長く暮らし続けられるか」という視点も大切です。本記事では、家賃を下げるために市営住宅へ転居した60代夫婦の事例をもとに、老後の住まい選びの注意点についてCFPの山﨑裕佳子氏が解説します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「市営団地に当選!」年金月21万円・60代夫婦、家賃4万円に歓喜も…〈老後安泰の切符〉を掴んだはずが、赤字家計に陥ったワケ【CFPが解説】
毎月2万円の赤字…年金月21万円・貯蓄900万円の60代夫婦
マサユキさん(仮名・69歳)とサチコさん(仮名・68歳)は今年、結婚40周年を迎えたおしどり夫婦。結婚以来、住まいは「賃貸派」です。
現在の収入は夫婦2人合わせて月額21万円の年金のみで、貯蓄は約900万円。貯蓄が平均より少ないという自覚があり、なるべく預金には手を付けない堅実な生活を心がけていました。
しかし、昨今の「物価高」には抗えず、食費や日用品の急激な値上がりにより、預金を取り崩すことが多くなりました。
【毎月の家計収支】
年金収入:21万円
支出合計:23万円
・家賃:9万円
・食費:6.5万円
・日用品:1万円
・水道光熱費:2万円
・医療費:0.5万円
・交通費:0.5万円
・保険料:2万円
・娯楽・交際費:1.5万円
単純計算で毎月2万円の赤字。気がつけば、3年間で預金残高は70万円以上も減っていたのでした。
家賃4万円の市営団地に当選!家計は黒字で「引っ越して正解」
そこで家賃負担を下げるため、夫婦は公営住宅に移り住むことを決心しました。
半年後、市営団地に当選し、入居が決まりました。5階建ての4階、間取りは2LDKです。家賃は入居者の所得により異なる仕組みで、マサユキさん夫婦のケースでは4万円です。
3LDKから2LDKへのダウンサイジングに伴い、不要な家具は処分。引っ越し費用と合わせて50万円の出費となりましたが、家賃を5万円下げられたことで、今後の月々の赤字は解消できる見込みでした。
想定通り、引っ越して数ヵ月間、家計は黒字に転じました。しかし、「団地に引っ越して正解」と思っていた矢先、状況は一転します。