不動産価格の高騰が続くなか、住宅購入でも「リセールバリュー」を重視する人が増えています。将来高く売れる物件を購入すれば、住みながら資産形成もできる。一見、合理的な考え方です。しかし、自宅が値上がりすれば、本当に豊かになるのでしょうか。実際に20代夫婦が4,200万円で購入した中古マンションが、現在は同じ建物内で6,500万円程度で売り出されている事例をもとに、不動産投資家でもあるCFPの竹下昌成氏が解説します。
「購入時の1.5倍で売れるの!?」20代夫婦が4,200万円で買った都内中古マンションが「6,500万円」に高騰。〈リセールバリュー重視〉に現役大家CFPが首をかしげるワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

自宅まで投資物件のように選ぶ必要があるのか?

私は30歳から不動産投資を続け、現在も大家業を本業としています。

 

投資用不動産を購入するときは、立地、家賃収入、利回り、修繕費、借入条件、将来の売却価格などを考えます。収益を得るための不動産ですから、合理的に判断する必要があります。

 

では、住宅はどうでしょうか。

 

例えば、自然が豊かで静かな郊外に住みたい人がいたとします。広い庭があり、子どもがのびのび遊べる。通勤には多少時間がかかるものの、家族にとって理想的な住環境です。

 

ただし、将来高く売れる可能性は低い。

 

 

では、その家を買うのは間違いなのでしょうか。私はそうは思いません。

 

本当にその家に住みたい理由があり、住宅ローンの返済や維持費を無理なく負担できるなら、それも一つの合理的な選択です。住宅には、資産としての価値だけでなく、そこで暮らすことによって得られる価値があります。広さ、静かさ、自然、子育て環境、家族や友人との距離。こうした価値は、将来の売却価格だけでは測れません。

 

もちろん、将来売却する可能性があるなら、売りにくさや価格下落のリスクも理解しておく必要があります。しかし、リセールバリューを優先するあまり、本当に住みたい場所や家を諦めてしまうのも、少し違う気がします。

自宅が値上がりしても、住んでいる限りお金にはならない

今回の20代夫婦が4,200万円で購入したマンションは、現在、同じマンション内で6,500万円程度の売出物件が出ています。

 

仮に同じ価格で売れたとしても、差額の2,300万円がそのまま利益になるわけではありません。売却費用や住宅ローン残高なども考える必要があります。

 

さらに、売却すれば住む場所がなくなります。同じ地域で同程度のマンションを買おうとすれば、次の物件も値上がりしている可能性があります。

 

では、自宅の値上がりには意味がないのでしょうか。

 

例えば、将来は地方に移住してスローライフを楽しみたい。子供が独立したらコンパクトなマンションに住み替えたい。あるいは、持ち家を売却して賃貸住宅に移るかもしれない。こうした計画がある人なら、値上がりした自宅を売却し、まとまった資金を手元に残せる可能性があります。

 

一方、今の家にずっと住み続けるなら、いくら値上がりしても基本的には現金収入を生みません。もちろん、自宅を担保に資金を調達し、不動産投資などに活用する方法もあります。ただし、借入には返済負担や担保処分のリスクが伴います。

 

私は、値上がり益を狙うのであれば、基本的には投資用不動産で行うべきだと考えています。投資用不動産なら、家賃収入を得ながら将来の売却も選択肢にできます。

 

一方、自宅の最大の目的は、自分や家族が生活することです。将来の資産価値を考えることは必要ですが、それだけで住宅購入を判断する必要はありません。

 

自宅は住むために買うもの。投資用不動産は収益を得るために買うもの。

 

将来の売却価格だけでなく、そこで暮らす何十年間の価値も考えて住宅を選んでほしいと思います。

 

 

竹下 昌成

竹下FP事務所 代表

日本FP協会認定CFP・TAC講師