不動産価格の高騰によって、20代・30代の住宅購入は難しくなっています。夫婦の収入を合算するペアローンや、返済期間を50年、60年とする住宅ローンも登場しています。しかし、借入可能額を増やすことが、本当に幸せな住宅購入につながるのでしょうか。今回は、著者である現役大家CFPの竹下昌成氏が相談から購入まで約3か月間サポートした20代共働き夫婦の実例をもとに、住宅購入で最初に考えたい「予算」と「余裕度」について解説します。
「2人の収入を足せば、もっと借りられますよね?」 中古マンションを購入した20代夫婦が、ペアローンではなく〈一人分の単独ローン〉を選んだワケ【現役大家CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

20代共働き夫婦がマンション購入を決意

2023年11月、20代の共働き夫婦からマンション購入の相談を受けました。

 

希望は東京都内の中古マンション。夫婦それぞれの通勤に便利で、住環境が良く、将来の資産価値も期待できる物件です。

 

当初は板橋・妙典・行徳・馬込などを候補に、築50年前後、50㎡程度、価格3,000万円前後の物件を探しました。しかし、希望する立地や広さ、管理状態などを満たす物件は簡単には見つかりません。実際に物件を見ても、そこで生活するイメージが湧かなかったようです。

 

そんななか、取引先の不動産会社から37件の販売物件リストを入手。奥さまが当時住んでいた社宅の近くに、条件の良いファミリー向けマンションを見つけます。当初の予算を超えていましたが、現地を見てもらうことにしました。

住宅ローンは「一人でも組める金額を上限にする」

この夫婦の住宅購入で、最初に決めていたことがあります。

 

それは、「住宅ローンは夫婦の収入を合算せず、一人でも組める金額を上限にする」ということです。

 

共働きなら、もっと高額な住宅ローンを組むことも可能です。それでも、借入額にあえて上限を設けたのには理由があります。

 

住宅ローンの借入可能額を考える際、金融機関が使う指標の一つが「返済比率」です。

 

返済比率とは、額面年収に対する年間返済額の割合です。例えば年収500万円、年間返済額120万円なら、返済比率は24%になります。

 

金融機関によって審査基準は異なりますが、35%程度を一つの目安とする場合があります。一方、無理のない返済比率として25%以内という考え方もあります。

 

ただし、返済比率だけで住宅購入の予算を決めることはできません。同じ年収500万円でも、独身者と子供が2人いる家庭では生活費が違います。クルマの有無、教育費、趣味、旅行など、お金の使い方も家庭によって異なります。

 

特に20代・30代の夫婦は、これから生活環境が大きく変わる可能性があります。妊娠、出産、育児休業、転職、病気などによって、一時的に世帯収入が減ることもあるでしょう。

 

夫婦それぞれの収入を前提に住宅ローンを組むと、どちらかの収入が減少した際に家計が苦しくなる可能性があります。今回の夫婦が単独ローンを上限としたのも、将来の生活の変化を考慮したためです。

 

銀行が貸してくれる金額と、安心して返済できる金額は別です。

「返せる額」と「余裕度」も違う

私は住宅購入の相談で、返済比率と同じくらい「毎月の手取り収支」を重視しています。

 

例えば、夫婦それぞれの手取りが30万円、合計60万円の家庭を考えてみます。生活費15万円、住居費13万円、趣味・小遣い10万円、外食2万円、保険1万円。毎月の支出は41万円、差し引き19万円が残ります。

 

数字だけ見れば余裕がありそうです。しかし、子どもが生まれて教育費が増えたり、クルマを購入したりすれば支出は増えます。住宅の修繕費や管理費・修繕積立金の値上がりもあります。また、育児休業や転職などによって収入が減る可能性もあります。

 

私は住宅購入を考える際、「予算」と「余裕度」の2つの軸で整理しています。

 

予算は、「いくらまで買えるか」。

 

余裕度は、「購入後の生活にどれだけ余裕があるか」。

 

家を優先するのか、生活を優先するのかによっても、選ぶ物件は変わります。

 

家には趣味の面もあります。広さ、眺望、立地、内装などにこだわること自体は悪いことではありません。ただし、家にお金をかけることで教育費や旅行、趣味などをどこまで制限することになるのかについては夫婦で十分に話し合っておく必要があります。