親の介護が必要になったとき、家族で考えなければならないのは、誰が世話をするかだけではありません。介護にかかる費用を誰が負担するのか、自分たちの老後資金をどう守るのか――話し合いが不十分なままでは、家族間の思わぬ対立につながることがあります。ある家族の事例から、親の介護の在り方、進め方について考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
恐ろしい…〈年金月15万円・81歳義父〉の介護費用を聞いた52歳嫁、思わず絶叫した「夫のひと言」 ※写真はイメージです/PIXTA

介護費用だけではない、家族が向き合うべき問題

介護をめぐる負担は、実際に世話をする時間だけではありません。費用の負担や仕事との両立、介護を担う人の生活設計にも影響します。

 

厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、同居する主な介護者の63.5%は女性。また、要介護者と同居介護者の双方が65歳以上の「老老介護」は61.9%に上り、「要介護3」以上では「ほとんど終日」介護する人が最多(29.5〜54.2%)を占めます。介護は家族の生活や将来設計を左右する重い問題なのです。

 

陽子さん夫婦はその後、義父本人の希望や貯蓄を確認し、施設の費用や公的な介護サービスについて調べることにしました。妻の退職金を使うかどうかを先に決めるのではなく、まず必要な費用と利用できる支援を把握することにしたのです。

 

「夫は、お義父さんの年金だけで施設費は賄えるもの、足が出ても少額だと思い込んでいたようです。だから『足りない分は私の退職金で』と軽々しく口にできたみたいで……。実際の費用感を知ってからは、何も言わなくなりましたよ」

 

公益財団法人生命保険文化センター『2024生命保険に関する全国実態調査』によると、介護費用の月額平均は9.0万円ですが、施設介護では13.8万円に増加します。また、要介護時に必要と想定する資金総額は平均3,298万円に上ります。

 

さらに同センター『2025(令和7)年度 生活保障に関する調査』では、親の介護の不安として「自身の経済的負担」(49.2%)や「将来の見通しの難しさ」(46.9%)が挙げられています。特定の家族の財産をあてにせず、本人の資金や公的支援を早めに確認することが重要です。