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「親の面倒を見るのは当たり前」 夫が当然のように口にしたこと
親の介護は、ある日突然、家族の家計や働き方に影響を及ぼすことがあります。本人の年金や貯蓄で費用をまかなえるのか、子ども世代が支援する必要があるのか。介護が始まってから慌てないためには、本人の希望を確かめ、家族で負担の範囲を話し合っておくことが大切です。
夫と二人で暮らす伊藤陽子さん(52歳・仮名)の義父は81歳。年金は月15万円で、これまでは一人で生活していました。しかし、体力の低下から日常生活に支障が出るようになり、家族で今後の暮らしを考える必要が生じました。
夫は、父を介護施設に入れる方向で話を進めようとしていました。陽子さんも、必要な介護を受けられる環境を整えることには異論がありません。ただ、施設の費用が年金だけで足りるのか、足りなければ誰が負担するのか、具体的な話は聞いていませんでした。
そんななか、夫は陽子さんにこう告げました。
「お前の退職金を使えばいいだろ。親の面倒を見るんだから、それくらい当然じゃないか」
陽子さんは耳を疑いました。退職金は、これまで働いてきた自分の生活を支え、夫婦の老後を守るための資金です。義父の介護に必要なお金を出すこと自体が嫌なのではありません。夫が自分に相談することなく、妻の退職金を使うと決めていたことが理解できなかったのです。
「ちょっと待って。なんで私の退職金を、あなたが勝手に使うと決めたの? 私たちの老後はどうするのよ!」
思わず声を荒らげた陽子さんに対し、夫は不満そうに「家族なんだから助け合うのが当たり前だろ」と返しました。
しかし、陽子さんにとって、助け合うことと、相手の財産を当然のようにあてにすることは別の話でした。義父の年金額は夫婦ともに知っていましたが、貯蓄がどの程度あるのか、介護費用がいくら必要なのか、本人がどこで暮らしたいのかさえ、十分に確認できていなかったのです。
それなのに、夫は陽子さんの退職金を使うことを、まるで当然のように考えていました。自分の老後にも関わる大切なお金を、相談もなくあてにされていた――。そのあまりに浅はかな考えに、陽子さんは恐ろしささえ覚えたといいます。