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堅実だった母に何が起きたのか…長男が知った一人暮らしの実情
誠さんは、母親の買い物を一方的にやめさせるのではなく、まずは普段の暮らしについて話を聞くことにしました。
すると、幸子さんは夫を亡くしてから家で過ごす時間が増え、テレビ通販を見ることが楽しみになっていたと話しました。商品を紹介する番組を見ていると、便利そうなものや体によさそうなものが気になり、電話で注文することもあったといいます。
「誰とも話さない日もあるから、つい注文しちゃうのよ」
その言葉を聞き、誠さんは考え込みました。母親が買い物をしていたことは知っていても、何を楽しみに一日を過ごしているのかまでは、ほとんど知りませんでした。
堅実だった母親が変わったように見えたのは、買い物の仕方だけが理由ではなかったのかもしれません。夫を亡くし、一人で暮らすようになった母親の日常を、誠さんは十分に把握できていなかったのです。
買い物の頻度や金額が以前と変わったとき、その背景には何があるのでしょうか。同じ商品を繰り返し購入する、支払いの管理が難しくなる、契約内容を把握できないといった変化が続く場合は、認知機能の低下が関係している可能性もあります。ただし、こうした行動だけで認知症と判断することはできません。生活環境や体調なども含めて状況を確かめる必要があります。
厚生労働省の研究班による推計では、2040年には認知症の高齢者が約584万人、軽度認知障害(MCI)の高齢者が約613万人になると見込まれています。MCIは、認知機能の低下が見られるものの、日常生活は自立している状態です。必ず認知症に進行するわけではありませんが、気になる変化が続く場合は、かかりつけ医などに相談することが大切です。
誠さんは、母親と一緒に定期購入の契約内容を確認しました。今後、不要な商品を購入しないようにする方法や、困ったときに相談できる相手についても話し合いました。母親の楽しみを一方的に取り上げるのではなく、本人の意思を尊重しながら、無理のない範囲で支出を把握できるようにしたのです。
高齢者の暮らしを考えるうえでは、家族とのつながりや、日常生活で人と接する機会にも目を向ける必要があります。内閣府の「人々のつながりに関する基礎調査(令和7年)」では、孤独感に影響を与えた出来事として、一人暮らしや家族との死別などが挙げられています。配偶者を亡くし、一人で暮らす高齢者にとって、日々の人とのつながりや生活の楽しみをどう確保するかは重要な問題です。幸子さんにとっては、テレビ通販で商品を選び、注文することが日々の楽しみの一つになっていました。
親のことはよく知っている。そう思っていても、離れて暮らしていれば、日々の生活や気持ちの変化に気づけないことがあります。お金の使い方も、その一つです。
「親のお金の使い方が以前と変わったと感じたら、見逃さないでほしいですね」
母親の暮らしを知った誠さんの経験は、親の行動を一方的に否定するのではなく、まずは変化の理由を知ろうとすることの大切さを示しています。気になる変化が続く場合には、かかりつけ医や地域包括支援センターなどに相談し、必要な支援につなげていくことも大切です。