(※写真はイメージです/PIXTA)
「2,000円払うなら娘とランチしたい」母の本音
リエさん夫婦の世帯年収は約900万円。1回1,000円や2,000円を払えば生活が苦しくなる家計ではありません。ただ、娘は中学生です。文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」の訂正後の数値によると、公立中学校に通う子ども1人あたりの年間学習費総額は54万2,450円、私立中学校では156万359円でした。学校教育費に加え、塾などの学校外活動費も含まれています。高校進学も控え、家計では教育費を意識する時期です。
「だから1,000円も払いたくないという話ではないんです。家では1,000円、2,000円の積み重ねも考えているのに、職場では当然のように『○円です』と言われる。同じ2,000円なら、たまには娘とお茶したり、ランチしたりするのに使いたいなって思うんです」
そんなある日、リエさんがほとんど話したことのない社員が結婚することになりました。また、「1人1,000円お願いします」という連絡が回ってきました。リエさんは初めて「今回は参加しません」と言おうか迷ったそうです。しかし、同じチームの社員たちが次々に支払うのを見ると、自分だけ断ることができませんでした。
「1,000円を惜しんでいると思われるのも嫌だし、『派遣なのに付き合い悪いね』と思われるのも嫌で。結局、払いました」
帰宅して夫に話すと、「嫌なら断ればいいじゃん」と言われました。リエさん自身も、その通りだと思います。しかし、毎日同じ職場で働く以上、金額以上に「断ったあとの空気」が気になってしまうのです。
「任意」の集金なら問題ない。でも強制なら?
職場で結婚祝いや餞別を集めること自体が、直ちに法律上の問題になるわけではありません。本人が自由に参加するかどうかを決められる「有志」の集金であれば、通常は大きな問題にはなりにくいでしょう。ただし、会社が本人の意思とは関係なく、祝い金などを給与から差し引く場合は別です。
労働基準法24条では、賃金は原則として「その全額を支払わなければならない」と定めています。法令で定められたものや、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者代表との書面による協定がある場合などを除き、会社が自由に給与から差し引くことはできません。また、「払わない」と断った人に対して上司が繰り返し支払いを迫ったり、それを理由に嫌がらせや不利益な扱いをしたりすれば、状況によってはハラスメントの問題につながる可能性があります。
厚生労働省の指針では、パワーハラスメントについて、「優越的な関係を背景とした言動」であり、「業務上必要かつ相当な範囲を超え」、「労働者の就業環境が害される」ものとしています。さらに、派遣労働者については、派遣元だけでなく派遣先にもハラスメント防止措置が求められています。相談したことなどを理由に、派遣労働者に不利益な扱いをすることも認められていません。
もちろん、「お祝い金をお願いします」と声をかけられただけで、直ちにパワハラになるわけではありません。問題は、本当に断る自由があるのかどうかです。
少額だからこそ、断りにくい
500円、1,000円、2,000円。一つ一つは小さな金額です。しかし、それが年に何度も続けば、負担は積み重なります。そして、金額以上に引っかかるのが、「払わない」という選択肢が見えにくいことです。
派遣先で直接「今回は参加しません」と伝えにくい場合は、派遣元の営業担当や相談窓口に相談する方法もあります。「毎回の集金は本当に任意なのか」「断った場合に職場で気まずくならないか不安だ」と伝え、派遣先との間に入ってもらうのも一つの選択肢です。
リエさんも、今後同じような集金が続くようなら、派遣元の営業担当に相談してみようと考えているといいます。職場のお祝いは、本来、祝う側の気持ちから生まれるものです。少額だからこそ、「これくらいなら全員払って当然」とするのではなく、それぞれが無理なく参加できる形になっているかを考える必要があるのかもしれません。
【注目のセミナー情報】
【実物資産】10月24日(土)
「日本刀投資」は他の実物資産と何が違う?
希少性・鑑定・保存状態…「価値」を見極め方を解説
【資産形成】11月5日(木)
富裕層のための「資産防衛と運用」
無駄な保険の見直しと、手元資金を守る投資のコツ