配偶者を亡くしたあと、生活を支える収入のひとつが遺族年金です。しかし、その制度は複雑で、亡くなった配偶者の年金額や、残された人自身の年金額によって、受け取れる金額は異なります。誤解も多く、実際の受給額を知って驚くこともあるようです。ある女性の事例から、遺族年金について知っておきたいポイントを整理します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「うそでしょ…」年金月16万円・71歳夫を亡くした72歳妻、従妹「遺族年金は月7万円」と言っていたが、年金事務所が教えてくれた「まさかの受給額」に絶句 ※写真はイメージです/PIXTA

共働きの場合は要注意。遺族年金ゼロの可能性も

なぜ、恵子さんは遺族厚生年金を受け取れなかったのでしょうか。

 

ポイントは、夫が受け取っていた年金の総額だけではなく、そのうち老齢厚生年金の「報酬比例部分」がいくらだったか、そして恵子さん自身の老齢厚生年金がいくらだったかという点にあります。

 

老齢年金には、国民年金から支給される老齢基礎年金と、会社員などが加入する厚生年金から支給される老齢厚生年金があります。会社員として働いていた期間や給与などによって、老齢厚生年金の金額は異なります。

 

一方、遺族厚生年金の額は、原則として、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。「夫が受け取っていた年金(の総額)に、そのまま4分の3を掛けた金額が遺族年金として受け取れる」と考えてしまうのが、よくある勘違い。

 

さらに、65歳以上で自分自身の老齢厚生年金を受け取る権利がある人の場合、遺族厚生年金との間で支給額の調整が行われます。遺族厚生年金の額を計算したうえで、自分自身の老齢厚生年金に相当する額が支給停止となる仕組みです。

 

恵子さんの場合、まず優先されるのは、自身の老齢厚生年金である月7万円ほど。遺族厚生年金は計算上、7.5万円。実際に支給されるのは、自身の老齢厚生年金との差額である5,000円のみ――となるのです。

 

「従妹は専業主婦だったので、生きていくのに遺族年金が頼り。私たちは共働きだったので、自分の年金で生きていけるだろう――というわけですね。納得できるようで、納得できないですね、この仕組み」

 

厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)における遺族年金の平均年金月額は84,228円。しかし共働き世帯の場合、期待するほど遺族年金がもらえない、ということも珍しくありません。自身の年金額が高いほど実際の受給額(上乗せ分)は少なくなるため、あらかじめ併給調整の仕組みを考慮した老後の資金計画を立てておくことが大切です。