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「親戚なんだから」と言われても
愛さんが夫に相談すると、夫も姉の頼み方には疑問を感じたようです。
「泊まるくらいならいいけど、試験会場がそんなに遠いならホテルのほうがいいだろう」
夫は義姉に直接連絡し、第一志望の大学を受験する際は近くに宿泊することを勧めました。しかし、義姉は納得していない様子だったといいます。
「親戚なんだから、こういうときくらい助け合ってもいいんじゃない?」
夫からその言葉を聞いた愛さんは、ますます釈然としない気持ちになりました。
「困っているときに親戚同士で助け合うことは大切だと思います。でも、今回はホテルという選択肢があるんです。私たちの家に泊まることが、甥にとって一番いい方法とも思えません」
さらに愛さんには、別の不安もありました。
「もし試験当日に電車が遅れたり、長時間の移動で疲れてしまったりしたら、こちらも責任を感じると思うんです。万が一、不合格になった場合、うちのせいにされるんじゃないかという気持ちも正直あります」
愛さん自身がその大学の卒業生であることも、気がかりでした。試験会場までの経路や周辺事情を知っているだけに、何かあれば対応を期待されるのではないかと感じたのです。
「前期日程でうまくいかなかったら、後期日程のときも頼まれるかもしれません。甥のことは応援していますが、受験のたびに私たちが対応することになるのは困ります」
最終的に愛さん夫婦は、第一志望の国立大学を受験する際の宿泊は引き受けず、大学近くのホテルを利用するよう改めて伝えました。都心の私立大学を受験する場合については、日程が決まってから相談することにしています。
義姉からは、その後、具体的な宿泊先についての連絡はありません。愛さんは、甥の受験がうまくいってほしいという気持ちに変わりはないといいます。ただ、義姉との間には、以前にはなかった距離を感じるようになりました。
ホテル代の節約と、親戚が負担する「見えないコスト」
日本政策金融公庫「令和3年度教育費負担の実態調査結果」によると、大学の受験費用は、国公立大学に進学した世帯で平均27万7,000円、私立大学文系では31万3,000円、私立大学理系では32万2,000円でした。これらは受験したすべての学校の受験料や交通費、宿泊費を含む金額です。
地方から首都圏の大学を受験する家庭にとって、宿泊費は決して小さな負担ではありません。親戚の家に泊まることで費用を抑えたいと考えること自体は、不自然なことではないでしょう。ただし、ホテル代がかからなくなっても、宿泊に伴う負担がなくなるわけではありません。
迎える側には、寝具や食事の準備などの負担があります。仕事の予定を調整したり、家族の生活リズムを変えたりする必要もあるでしょう。
今回の愛さんのケースでは、在宅勤務であることが、義姉に「時間の融通が利く」という印象を与えていたようです。しかし、働く場所が自宅であることと、勤務時間を自由に使えることは別の話です。また、受験生本人の立場から考えても、親戚の家に泊まることが必ずしも最善とは限りません。特に第一志望の大学を受験するのであれば、費用だけでなく、移動にかかる時間や当日の体調管理も考慮したいところです。
親戚の家に泊まれば、確かにホテル代は節約できます。しかし、その節約は、誰かが時間や労力を負担することで成り立っている場合もあります。費用を抑えることと、その負担を親戚に引き受けてもらうことは、分けて考える必要があるのではないでしょうか。