日本政策金融公庫「令和3年度教育費負担の実態調査結果」によると、大学の受験費用は平均30万3,000円。受験料だけでなく、交通費や宿泊費も家計の負担になります。地方から首都圏の大学を受験する場合、親戚の家に泊まるという選択肢もありますが、迎える側にも事情があります。義姉から大学受験を控えた甥の宿泊を頼まれた43歳の共働き女性。第一志望の大学まで片道90分かかることを理由にホテルを勧めたところ、義姉の態度が一変しました。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
息子を泊まらせてほしいんだけれど…大学受験を控えた甥の宿泊を頼んできた義姉。〈ホテル代2泊3万円〉を惜しむ義姉に43歳共働き妻が「ホテルに泊まって」と断ったワケ ※写真はイメージです/PIXTA

「在宅勤務なら大丈夫でしょ」義姉からの頼み事

千葉県内で暮らす愛さん(43歳・仮名)は、会社員の夫(45歳)、中学生の娘と3人暮らし。愛さんは都内に本社があるメーカーに勤めており、年収は約620万円。IT企業で働く夫の年収は約580万円で、世帯年収は1,200万円ほどです。

 

夫婦ともにフルタイムで働いていますが、愛さんは週4日ほど在宅勤務をしています。自宅で仕事ができるため通勤の負担は少ないものの、日中はオンライン会議や社内チャットへの対応に追われ、昼食を取る時間もままならない日があります。

 

そんな愛さん夫婦に、地方都市で暮らす夫の姉から連絡がありました。義姉の息子は高校3年生。首都圏にある国立大学を第一志望としており、2次試験を受ける予定です。その際、愛さん夫婦の家に泊めてもらえないかという相談でした。

 

「ホテル代も高いし、そっちに泊めてもらえると助かるんだけど。愛さんは在宅勤務なんだよね?」

 

愛さんは、その言葉が引っかかりました。以前から、義姉は愛さんの働き方について、少し誤解しているように感じていたといいます。

 

「在宅勤務と話すと、家にいるなら自由に時間を使えると思われることがあるんです。でも、仕事中に来客の対応をしたり、食事を用意したりする余裕はありません。義姉も、私が家にいるなら甥の面倒を見られるだろうと思っていたようです」

 

もっとも、愛さんも甥の大学受験は応援したいと思っていました。首都圏の土地勘がない甥にとって、親戚の家に泊まれることは心強いかもしれません。そこで、具体的な受験日程と志望大学を確認することにしました。

第一志望の大学は、愛さん自身の母校だった

愛さんが大学名を聞くと、偶然にも自身が卒業した大学でした。都心から離れた郊外にある国立大学で、現在の自宅から電車で約90分かかります。簡単な乗り換えがあり、自宅から駅までの移動や、大学の最寄り駅から試験会場までの時間を含めれば、片道2時間近くかかる可能性もあります。

 

「私自身、その大学を受験したときは隣の駅のホテルに泊まりました。大学の周辺は都心とは違いますし、試験当日に長時間移動するのは負担が大きいと思ったんです」

 

愛さんは、義姉にこう提案しました。

 

「それなら、大学の近くにホテルを取ったほうがいいんじゃないですか? 試験当日の朝も余裕を持って行動できるし、初めての土地で長時間電車に乗るのは大変でしょうから」

 

国立大学の2次試験は2日間にわたるため、前日に現地入りするなら2泊3日の日程になります。大学周辺のホテルをスマートフォンで調べた愛さんは、宿泊料金の高さに驚きました。安いところでも1泊1万5,000円ほど。2泊で6万〜10万円かかるホテルも珍しくありません。

 

「私立も含めていくつか大学を受けるから、できればお金をかけたくないのよ。受験料も交通費もかかるし、この時期はホテルも高いでしょう?」

 

愛さんは戸惑いました。

 

「教育費が大きな負担なのはわかるんです。ただ、第一志望の試験だからこそ、大学の近くに泊まるほうが安心ではないかと思ったんです」

 

愛さんは、都心にある私立大学の受験についても確認しました。こちらは自宅から約60分。第一志望の大学よりはアクセスがよく、当日の移動も比較的容易です。

 

「都心の私立大学を受けるときなら、うちからでも通えると思いますよ」

 

そう伝えたものの、義姉は第一志望の国立大学の受験でも泊めてほしいという考えを変えませんでした。愛さんは、義姉が受験当日の移動による負担よりも、ホテル代の節約を優先しているように感じたといいます。

甥に付き添うために有給休暇を取る?

さらに愛さんを困惑させたのは、義姉からの次の言葉でした。

 

「初めて行くところだから心配なのよね。朝、駅まで一緒に行ってもらえたりする?」

 

愛さんは驚きました。もちろん、慣れない土地での受験に不安を感じることは理解できます。しかし、試験当日の朝に付き添うとなれば、愛さんか夫が仕事を休まなければなりません。

 

「朝の時間帯にはオンライン会議も入っています。仕事を調整するなら、有給休暇を取ることになります。宿泊を引き受けるだけでも気を使いますが、そこまで頼まれるとは思っていませんでした」

 

また、愛さん夫婦の家には中学生の娘もいます。娘は学校や部活動、塾などで忙しく、家族それぞれが決まった生活リズムで過ごしています。客間があるわけではないため、甥が泊まることになれば、娘にもリビングの使い方や就寝時間などで協力してもらう必要があります。

 

「うちにも受験を控える年齢に近い娘がいますから、義姉の気持ちはわかるんです。でも、娘の生活もありますし、家族全員が甥の受験に合わせて生活するのは、簡単なことではありません」

 

寝具の用意や食事の準備だけでなく、試験会場までの経路や出発時刻の確認、当日の交通機関の乱れへの対応など、考え始めれば気になることは次々に出てきます。私立大の受験で宿泊することはOKしたものの、愛さんが特に引っかかったのは、義姉がこうした負担について、ほとんど尋ねてこなかったことでした。

 

「ホテル代を節約できるのはいいことかもしれません。でも、そのために私たちが仕事を調整したり、有給休暇を使ったりすることは、当然のように考えてほしくないですね」