我が子の将来や夢のために教育費を注ぎ込む親は少なくありません。しかし、親の過度な期待やこだわりから特定の進路に過剰な投資を重ねると、家計を圧迫するだけでなく、不測の事態が生じた際に老後資金を大きく損なうリスクを孕んでいます。事例を見ていきましょう。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
「そりゃねえよ…」〈総額5,400万円〉教育費に全ベットした65歳夫婦、私立医学部を卒業させた一人息子が“医者の夢”を諦めたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

医療系学費の現実

子どもを医療系の学部へ進学させるには、家計の面から見ても大きな経済的負担が伴います。

 

文部科学省が公表した『令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額』によると、私立大学歯学部における初年度の納付額は平均で約482万円にのぼり、6年間の学費総額は2,000万円前後に達します。

 

一方、日本政策金融公庫『令和3年度 教育費負担の実態調査』における一般的な大学4年間の在学費用(授業料、通学費、塾代などの合計)の平均を見ると、私立文系で約690万円、私立理系でも約822万円です。私立医学部の場合、6年間の学費総額は平均で約3,000万〜4,000万円規模となり、中高一貫校の授業料や予備校代などが加わることで、負担額は容易に5,000万円を超える水準へと膨らみます。

 

さらに、高額の教育費を注ぎ込んで大学に入学・卒業したとしても、国家試験の壁やその後のキャリア形成が想定どおりに進むとは限りません。

 

文部科学省『医学部入学者の卒業及び医師国家試験合格状況等』(2024年公表)によると、私立大学医学部において入学から6年間で留年せずストレートで医師国家試験に合格する割合は平均で81.3%となっており、最も低い大学では61.7%にとどまります。およそ5人に1人はストレートで医師になれず、1年留年するごとに300万〜600万円規模の追加学費が発生する計算になります。

 

また、厚生労働省『第118回医師国家試験の合格発表について』(2024年発表)によると、現役の合格率が92.4%であるのに対し、浪人の合格率は55.9%まで低下します。

 

高額な学費をかけて大学を卒業しても、国家試験の不合格や進路の変更といった予期せぬ展開が生じる可能性は十分に存在します。老後資金を取り崩してまで教育費を捻出していた場合、そうした事態が起きた際のリカバリーは容易ではなく、家計や家族関係の双方に大きな影響を残すことになるでしょう。教育費の掛け方は家計全体のバランスを見ることが重要です。

 

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