子どもの誕生や成長を祝う通過儀礼は、本来であれば家族の絆を深める慶事のはずです。しかし、家族間で異なる価値観や金銭の授受を巡り、些細なすれ違いから深刻な対立へと発展するケースも。事例を見ていきましょう。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
孫とはもう5年会っていません…年金月12万円の72歳父を、長男一家と疎遠にさせた「お宮参り」での失言 (※写真はイメージです/PIXTA)

儀礼をめぐる家族間の対立

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業年報』によると、公的年金の平均月額は厚生年金(第1号)で約14万6,000円、国民年金のみでは約5万6,000円です。キヨシさんの「年金月12万円」という収入は、現役時代の加入期間や働き方によっては珍しくない水準ですが、総務省『家計調査(2023年)』における高齢夫婦無職世帯の平均実支出(月約28万2,000円)に照らし合わせると、嘱託勤務の収入を合わせても毎月の生活防衛で手一杯なのが現実です。

 

こうした経済的余力のなさは、子や孫への慶弔費の出し方にも直結します。

 

一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会が示す儀礼の目安では、祖父母から孫への出産祝い金は「5万〜10万円」程度が一般的な相場です。また、ソニー生命保険『シニアの生活意識調査(2024年)』によると、過去1年間にシニアが孫のために支出した金額の平均は約10万4,000円にのぼります。

 

しかし年金生活の高齢世帯にとって、数万円のお祝金は家計を圧迫します。キヨシさん夫婦は「あとで渡そう」と考えていましたが、感染対策や日程調整に追われていた子世代の視点では、「事前の相談に対してお祝いもなく、ただ断られた」という結果だけが先行することに。

 

そして、こうした不満を決定的な亀裂へと変えたのが、キヨシさんが口にした「相手の親も常識がない」という言葉でした。夫婦間や親子間の行き違いにとどまらず、配偶者の実親を直接非難する言葉は、言われた側にとって自身のルーツや家族関係そのものを否定された強い反発として残り続けるもの。特に本事例では、嫁側には「なにも支援をしていない側から、こちらの親を一方的に攻撃された」と映ることになりました。

 

家族間トラブルの発端は互いの思いのすれ違いであることが少なくありません。そこにお金が絡むといっそうこじれることも。いまの状況を打開するには、相手方が変わることを願うより、自身が行動に移すほかないのかもしれません。

 

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