結婚や住宅の取得など、家族のライフステージが変わる局面では、将来の生活設計を巡る対話が欠かせません。しかし、ほかの親族にも影響をおよぼす重大な決定が、事前の相談もなく一方的に進められてしまうケースがあります。将来の介護や相続にも直結する問題を巡り、家族間で生じる認識の乖離と疎外感について、ある30代男性の事例から考察します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
「な、なんで…実家がなくなってる?」手土産を抱えて更地を前に立ち尽くし…生まれ育った家を両親が勝手に売却。家族ののけ者〈東京から帰省した31歳長男〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

実家のあり方の変化

かつての日本では「長男が家督を継ぎ、親と同居して墓を守る」という直系家族規範が強固に機能していました。しかし、産業構造の変化や都市部への人口流出に伴い、子ども世代が親と同居する世帯の割合は大きく低下しています。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、夫婦における親との同居率は全体で15.6%にとどまります。同居の内訳を見ても、夫の親(父親7.7%、母親10.6%)と同居する世帯はごくわずかであり、かつての「長男が家を継ぎ、親と同居する」というモデルはすでに過去のものとなっています。

 

現在では、共働き世帯の増加に伴い、子育てのサポートや将来の介護負担を見据えて「地元に残る娘夫婦」と同居・近居を選択する実親が増加傾向にあります。居住形態の選択それ自体は合理的な判断といえますが、トラブルの原因となるのは「重要決定におけるプロセスの不透明さ」です。

 

都市部へ出た子どもにとって実家は「変わらない帰省先」であり続ける一方、地方の親にとっては「余生を維持するための現実的なリソース」に変貌していきます。この認識の乖離を埋める対話を怠り、関係者を蚊帳の外に置く対応は、親族関係を決定的に分断させる要因となってしまうのかもしれません。

 

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