(※写真はイメージです/PIXTA)
新婦が明かした結婚式前のやり取り
それからしばらくして、ミズキさんは東京に住む友人たちと食事をする機会がありました。結婚式を挙げたばかりの友人も参加し、自然とアヤカさんの話題になりました。そこで新婦から、意外な話を聞きます。実は結婚式の前、アヤカさんから「子ども2人を連れて出席できないか」と相談されていたというのです。
新婦は小さな子どもの同席は遠慮してほしいと伝え、必要であればベビーシッターを手配すると申し出ました。すると、アヤカさんからは「だったら大丈夫」と返事があったそうです。
「それを聞いて、旦那さんが一人で子どもを見るのを嫌がったのかな、という話になりました。でも、最初から家族で東京に来る予定だったのかもしれませんし、実際のところはわかりません」
ミズキさんたちが気になったのは、学生時代には友人と集まるのが好きだったアヤカさんが、結婚式の日はほとんど話す時間もなく帰ってしまったことでした。とはいえ、ミズキさんとアヤカさんはグループでは仲がよかったものの、個別に連絡を取り合うほど親しい関係ではありません。普段の夫婦関係も知らず、本人から相談されたこともありませんでした。
結局、その日は「杞憂だといいけどね」と話して終わったといいます。
2年後に知った、友人の離婚
それから2年ほど経ったころ、ミズキさんは共通の友人からアヤカさんが離婚したことを知らされました。原因は夫のモラルハラスメントだったと聞いたそうです。
「詳しいことは本人から聞いていないのでわかりません。でも、離婚したと聞いて、真っ先に思い出したのがあの結婚式でした」
夫が迎えに来ているからとお茶を断ったこと。夫が友人たちに挨拶もせず、アヤカさんを連れて帰ったこと。そもそも学生時代から挨拶の一つも満足にできなかったこと。
それぞれは些細な出来事だったかもしれません。しかし、離婚の話を聞いたあとでは、別の意味を持つように感じられたといいます。
「当時の旦那さんの言動がすべてモラハラだったと決めつけるのは違うと思います。でも、私たちが感じた違和感は、何かのサインだったのかなって」
アヤカさんは大学時代に教職課程を修了し、教員免許を取得していました。ミズキさんは、今後の仕事についても何らかの道を見つけられるのではないかと考えています。
「詳しい事情はわからないけれど、離婚できてよかったのかもしれないね、と友人たちと話しました。夫の転勤で仕事を辞めざるを得ず、経済的な理由から離婚したくてもできない人もいると思うので」
一方で、あのときもう少し踏み込んで話を聞けばよかったのではないかという思いも残っています。ただ、それほど親しい間柄ではなかったため、家庭の事情を尋ねることにはためらいがあったそうです。
誰にも相談できない人は少なくない
内閣府「令和8年版男女共同参画白書」によると、結婚経験のある女性の27.5%が配偶者から暴力を受けた経験があり、被害を受けた女性の36.3%は誰にも相談していません。暴力には身体的なものだけでなく、交友関係の制限などの心理的攻撃や経済的圧迫も含まれます。こうした問題は、学歴や職業、社会的地位だけでは判断できません。また、配偶者の転勤や出産・育児によって仕事や人間関係から離れると、経済的な自立や周囲への相談が難しくなる場合もあります。
一方、友人の立場から家庭内の事情を知るのは容易ではありません。相手の配偶者を一方的に批判するのではなく、本人が話したいときに話せる関係を保つことも大切でしょう。
ミズキさんは、アヤカさんに離婚の事情を直接尋ねたことはありません。
「本人から聞いた話ではないので、こちらから離婚のことを聞くのも違うと思うんです。今は子どもたちと穏やかに暮らせているといいなと思っています」
友人たちと「杞憂だといいけどね」と話したあの日。それでもミズキさんは今も時折、あのとき何かできなかったのだろうかと思い返すそうです。
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