定年後、子どもや孫のために時間を使うことが生活の一部になっている人もいるでしょう。送迎や買い物の手伝いなど、家族から頼られることにやりがいを感じる人もいます。一方、孫の成長や家族の生活環境の変化によって、これまで必要とされていた役割が変わることもあります。ある男性の事例から、老後の生きがいと家族の変化について考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「もう来なくていいよ」孫の塾帰り、毎週迎えに行っていた〈年金月18万円・68歳祖父〉、生きがいを失ったその後 ※写真はイメージです/PIXTA

子や孫のために空けていた時間、これからどう使うか

数日後、伊藤さんは長女の家を訪ねました。そこで愛さんから、孫が最近は友人と一緒に帰りたがっていることや、塾の終了時間に合わせて迎えに行ける日が増えたことを聞きました。

 

「お父さんには本当に助けてもらったよ。でも、もう大丈夫だから。ありがとう」

 

長女にそう言われ、伊藤さんは自分の行動を振り返りました。最初は頼まれたときだけだった送迎が、いつの間にか自分の予定の中心になっていたのです。

 

「娘に頼まれたら行く、というだけだったのに、気づけば自分から迎えに行くつもりで予定を空けていました。娘のため、孫のためと、時間を空けていましたが、ぽっかり空いてしまいました」

 

それから伊藤さんは、送迎を毎週の習慣にするのをやめました。必要なときに頼まれれば手伝うものの、自分から予定を確認することは控えています。

 

空いた時間には、以前から興味のあった家庭菜園を始めました。近所の知人と出かけることもあります。

 

「孫のために時間を使うのが当たり前になっていました。でも、孫には孫の生活がありますしね。私も自分の時間を楽しんでいいんですよね」

 

内閣府『高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(第10回)』によると、老後の子どもや孫との付き合い方について、日本の高齢者の59.6%が「ときどき会って食事や会話をするのがよい」と回答しており、適度な距離感を保つ関係性を望む人が過半数を占めています。

 

また、生きがいを感じる時として「家族との団らん」(53.1%)が最多である一方、「趣味やスポーツに熱中している時」(43.4%)も高い割合を示しています。家族を支える役割にやりがいを感じる姿勢は素晴らしいものですが、家族の成長や環境の変化に応じて柔軟に関わり方を見直し、自分自身の時間や趣味を楽しむことが、充実したセカンドライフを送るうえで大切です。