内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると、65歳以上の79.6%が親しい友人・仲間を持っていると回答しています。また、親しい友人・仲間が多い人ほど、生きがいを十分に感じている割合が高い傾向がみられました。65歳で退職し、仕事一筋の生活から一変した67歳の男性。趣味や友人との交流を楽しむ妻についていこうとしますが、思いがけず強い言葉で拒絶されてしまいます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
ついてこないで!妻のランチ会に同行しようとした〈年金月28万円〉67歳夫…まさかの拒絶に「俺の人生は間違っていたのか」と自問したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職後、毎日が休日になった72歳夫

神奈川県内で暮らすマサオさん(67歳・仮名)は、65歳の妻・チエコさん(仮名)と2人暮らしです。マサオさんは大学卒業後、大手メーカーに就職。営業職として長年勤務し、管理職も経験しました。60歳で定年を迎えた後は再雇用制度を利用し、65歳まで働き続けました。

 

現在、夫婦の年金収入は合わせて月約28万円。住宅ローンは完済しており、経済的に大きな不安はありません。一方、チエコさんは現在も週に1~2日、近所の店舗でパートとして働いています。収入は月5万円程度。生活費のためというより、外に出て人と接することが好きなのだそうです。

 

「妻はもともと社交的な人でした。仕事をしていたころから友達と出かけたり、習い事をしたり。定年後はもっと家にいるようになるのかと思っていたんですが、むしろ前より忙しそうです」

 

チエコさんの趣味は映画鑑賞と書道。学生時代からの友人とも定期的に会い、美術館や映画館にも足を運びます。予定のない日は読書を楽しみ、一人の時間も大切にしています。対照的に、マサオさんにはこれといった趣味がありません。現役時代は仕事に追われ、休日は家で休むことがほとんど。会社の同僚とゴルフに行くこともありましたが、退職後は誘いが減りました。

 

かつては毎日のように連絡を取り合っていた仕事仲間とも、今では年賀状を交わす程度。その仲間でさえ「年賀状じまい」をする人がチラホラ出てきました。最初は時間に追われない生活を満喫していましたが、次第に予定のない毎日に物足りなさを感じるようになったそうです。

「俺も一緒に行こうかな」妻の予定についていこうとする夫

マサオさんが最近気になっているのは、妻が毎日のように楽しそうに過ごしていることです。

 

「今日は学生時代の友人とランチに行くの」「来週は展覧会が始まるから楽しみ」

 

そんな妻の外出に、自分も参加できないかと考えるようになりました。ある日、チエコさんが美術館へ行くと聞き、「俺も一緒に行こうかな」と声をかけました。しかし、「美術館は一人で行きたいの。歩くペースも違うし……。時間を決めて集合でもいいけれど、スマホでいろいろ調べながら回るし、ぼーっと絵を見たいから3時間はかかるよ」と言われ、諦めました。

 

別の日、書道教室についていこうとすると、「見学するなら事前に先生に聞かないと」と言われました。同じようなことが何度か続き、マサオさんは少しずつ不満を感じるようになりました。

 

「夫婦なんだから、一緒に出かけてもいいじゃないかと思ったんです。自分が仕事をしていたころ、妻はずっと一人で出かけていましたから。今度は夫婦で楽しむ時間があってもいいんじゃないかって」

 

そんなある日、チエコさんが昔からの友人3人とランチをする予定だと話しました。マサオさんは何気なく、「学生時代の友人だろ。俺も会ったことある人たちだし、一緒に行こうかな」と口にしました。

 

すると、チエコさんの表情が変わったといいます。

 

「どうしてあなたが来るの? ついてこないで」

 

思いもよらない反応に、マサオさんは驚きました。

 

「別にいいじゃないか。知らない人たちじゃないんだし」

 

するとチエコさんは、少し強い口調でこう言いました。

 

「私の友達とのランチに、どうしてあなたがついてくるの? 友達も気を使うだろうし、私には私の付き合いがあるの。何でも一緒にしようとしないで」

 

マサオさんは言い返すことができませんでした。妻にはっきり拒絶されたのは初めてだったからです。