長年働き、税金や社会保険料を納め、老後に備えてきた人にとって、年金生活は現役時代の積み重ねが表れる時期でもあります。しかし、物価や医療費、住宅の維持費が上がるなか、年金だけで余裕のある暮らしを続けるのは簡単ではありません。働いていたころに思い描いていた老後と、実際の生活との間には、どのような差が生まれているのでしょうか。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「こんなの国民をバカにしてますよ!」 年金月14万円・72歳男性、40年以上働いてきたのに老後も「節約続き」のワケ ※写真はイメージです/PIXTA

「これだけ働いてきたのに…」年金月14万円、72歳男性の不満

山田誠さん(72歳・仮名)は、年金月14万円で賃貸アパートに一人暮らしをしています。高校卒業後に製造会社へ就職し、定年まで勤め上げました。退職後も再雇用で働きましたが、70歳を迎えたころ、膝の痛みが悪化。長時間立ち続ける仕事を続けるのが難しくなり、退職しました。

 

「働けるなら働きたいですよ。でも、膝が痛くて、以前のような仕事はできません。年齢のこともあって、次の仕事が簡単に見つかるとも思えないんです」

 

独身で子どもはおらず、生活費を分担できる家族はいません。現役時代は給料の一部を貯蓄に回し、老後に備えてきました。定年まで勤めれば、年金と貯蓄で何とか暮らせると考えていたのです。

 

しかし、年金だけの生活が始まると、家計に余裕はありませんでした。家賃は月5万円台。年金から支払うと、残りは9万円ほどです。食費や光熱費、通信費、日用品代に加え、通院費もかかります。

 

「スーパーでは安いものを探しますし、外食もほとんどしません。服も必要になってから買います。それでも、毎月余裕があるわけではありません」

 

総務省『消費者物価指数』によると、2025年の総合指数は前年比3.2%上昇しました。食料品など日常の支出が増える一方、年金額の改定が物価上昇と同じ割合になるとは限りません。年金を主な収入とする高齢者にとって、値上がりは家計を圧迫する要因となっています。

 

山田さんは、毎月の支出をノートに記録しています。電気の使い方にも気を配り、買い物では必要なものだけを選びます。それでも、家賃を自分の都合で下げることは難しく、食費にも削れる限度があります。

 

「給料をもらっていたころなら、残業をして収入を増やすこともできました。今は年金だけ。働きたくても体がついていかない。少しは貯金がありますが、病気や急な出費を考えると、簡単には使えません」

 

山田さんの不満は、ぜいたくができないことだけではありません。長年働き、保険料を納めて老後に備えてきたのに、退職後も支出を切り詰め続けなければならない。その現実に納得できないのです。

 

「老後は少しくらい好きなことができると思っていました。旅行に行くどころか、急な出費があるだけで不安になります。昔は真面目に働け、そうしたら老後は保障する、みたいに言っていたのに……こんなの国民をバカにしてますよ! 」