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希望の賃貸住宅が見つからない…高齢者の住まい探しの壁
博さんが希望したのは、駅から徒歩圏内にあり、スーパーや病院にも通いやすいマンションでした。家賃と管理費を合わせて月8万円程度なら、年金収入の範囲内で暮らせると考えたからです。
しかし、不動産会社に問い合わせても、希望条件に合う物件はなかなか見つかりません。年齢を伝えると、保証人や緊急時の連絡先について確認されることもありました。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以降に賃貸住宅への入居を断られた経験がある人は1.5%でした。そのうち、断られた理由として「高齢のため」を挙げた人は61.5%、「万一の時の身元引受人がいないため」は28.2%です。ただし、理由を回答した人は39人と少なく、結果の解釈には注意が必要です。
博さんの場合、預貯金があっても、希望する物件の条件や入居審査、保証人などの問題がすぐに解決するわけではありませんでした。
退去の時期が迫るなか、博さんは不動産会社を回り続けました。しかし、希望する物件は決まらず、ホテルに泊まる日も出てきました。宿泊費がかさむことも気になり、条件を見直さざるを得なくなったのです。
「これだけ貯金があって、年金も入るのに、住むところがすぐに決まらないとは思いませんでした。家賃さえ払えば借りられると思っていたんです」
博さんは、駅から離れた物件や築年数の古いアパートにも目を向けました。最終的に、希望していた条件の一部を諦め、家賃を抑えた物件を探すことになります。
国土交通省は、高齢者など住まいの確保に配慮が必要な人の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度などを設けています。2025年10月には改正住宅セーフティネット法が施行され、入居支援や入居後の見守りなどを進める仕組みも整備されました。高齢者の住まい確保は、本人の資産だけでなく、受け入れ側の不安や支援体制にも関係する問題です。
博さんは、退職金や年金があれば老後の生活は安泰だと考えていました。しかし、夫婦関係が変わり、住み慣れた自宅を離れる可能性が生じたことで、生活の前提そのものが揺らいだのです。
預貯金があっても、希望する住まいがすぐに見つかるとは限りません。老後の生活設計では、収入や貯蓄額だけでなく、夫婦が別々に暮らすことになった場合の住居費や住まいの確保についても考えておく必要があります。