定年後、退職金や年金があれば、老後の生活は安泰だと考える人もいるでしょう。しかし、夫婦関係の変化によって、それまで住み続けるつもりだった自宅を離れることになれば、生活設計は大きく変わります。預貯金があっても、希望する賃貸住宅に入居できるとは限りません。今回は、妻から突然別居を求められた69歳男性の事例をもとに、老後の住まい探しで直面する問題を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「まさか、家を出るのは私なのか…」〈退職金2,800万円・年金月20万円〉69歳元営業部長、妻から突然の別居要求…住まいが見つからず路頭に迷う ※写真はイメージです/PIXTA

妻から突然の別居要求…退職金を手にした元営業部長の誤算

高橋博さん(69歳・仮名)は、住宅設備メーカーで営業部長を務め、60歳で定年退職しました。退職金は2,800万円。65歳まで再雇用で働き、現在は月約20万円の年金を受給しています。

 

妻の由美子さん(66歳・仮名)と暮らす自宅は、住宅ローンを完済した戸建て住宅です。子ども2人はすでに独立し、預貯金も約2,300万円残っていました。博さんは、老後のお金に困ることはないと考えていたといいます。

 

現役時代、博さんは仕事を優先し、家事や子育ては由美子さんに任せてきました。退職後は夫婦で過ごす時間が増えましたが、それが必ずしも妻の望む生活だったわけではありません。

 

博さんは買い物や外出にも妻を誘い、食事の準備なども由美子さんに頼ることが多かったそうです。一方、由美子さんは、長年自分のペースで続けてきた暮らしを変えなければならないことに、次第に負担を感じるようになりました。

 

「仕事をしていたころは、夫が家にいない時間も多かったんです。退職してからは、何をするにも私に確認するようになりました。これから先もずっとこの生活が続くのかと思うと、気が重くなりました」

 

由美子さんは、そう振り返ります。

 

夫婦で話し合っても、博さんは「せっかく仕事を辞めたのだから、一緒に過ごす時間を増やしたい」と考え、由美子さんの不満を十分に理解できませんでした。

 

そしてある日、由美子さんは博さんに別居を切り出します。離婚も視野に入れていると告げられ、博さんは戸惑いました。

 

由美子さんは、実家の近くで暮らしたいと考えていました。自宅をどうするかについて夫婦の話し合いはまとまらず、博さんは、ひとまず自分が住まいを探すことにしたのです。

 

「まさか、家を出るのは私なのか……」

 

ところが、博さんは賃貸住宅探しを簡単に考えていました。預貯金があり、年金も毎月入るのだから、希望する物件を借りられるはずだと思っていたのです。