(※写真はイメージです/PIXTA)
判断能力が衰えた親の死後トラブル
裁判所『司法統計年報(令和5年度)』によると、全国の家庭裁判所で終結した遺産分割事件のうち、遺産総額が「5,000万円以下」の事案が全体の7割以上を占めています。資産家のみならず一般的な世帯でも相続紛争は頻発していますが、そのなかでも「生前の引き出し(使途不明金)」は、感情的なもつれと相まって長期化しやすい争点の一つです。
被相続人の死亡後に生前の不自然な出金が発覚した場合、法的には以下のような論点が問題となります。
「贈与」の立証責任と判断能力の有無
引き出しを行った側が「生前贈与として受け取った」と主張する場合、その立証責任は受け取った側にあります。民法上、贈与は双方の合意によって成立しますが、贈与契約書などの客観的な証拠がない場合、単なる口頭のやりとりだけで正当な贈与と認められるのは容易ではありません。特に出金当時の被相続人の要介護度や認知症の診断歴、生活実態に照らし、本人に贈与を行う合理的な意思能力がなかったと判断されれば、引き出された金銭は「不当利得」または「不法行為に基づく損害賠償」として、遺産への返還請求の対象となる可能性が高いです。
特別受益としての持ち戻し
仮に被相続人の意思による贈与と認められた場合であっても、特定の相続人(またはその代襲者など)が生前に多額の財産を受け取っていた事実は、遺産分割において「特別受益」に該当する可能性があります。特別受益と認定されれば、その金額を遺産の総額に加算したうえで各人の相続分を再計算することになり、最終的な受取額から控除されることも。
生前の透明性の確保と、第三者機能の活用
被相続人の金銭の引き出しや使途については領収書や家計簿などの記録を必ず残し、定期的に親族間で共有しておくことがトラブル防止の基本です。また、親族間での管理が難しい場合は、任意後見契約や弁護士・司法書士等による財産管理委託契約、信託銀行の管理信託などを活用し、第三者の目を介在させることが防衛策となります。
判断能力や気力が衰えかけた高齢者は、孤独感から耳触りのいい言葉をかけてくれる相手を信用してしまいがちです。家族同士で禍根を残さないためにも、高齢者の金銭管理には「おかしい」と思ったタイミングから対策を講じておく必要があります。
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