退職後は、年金収入や貯蓄に合わせて支出を見直す必要があります。一方、現役時代の金銭感覚や人付き合いを変えられず、思わぬ出費を重ねてしまう人も。ある男性の事例から、老後のお金との向き合い方を考えていきます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「割り勘なんて格好悪い」〈年金月20万円〉70歳元営業部長、旧友に18万円を奢った夜…通帳を見て後悔した理由 ※写真はイメージです/PIXTA

年金収入があっても安心できない老後の家計

佐藤さんのように、一定の年金収入があっても、貯蓄の減少に不安を感じる高齢者はいます。

 

金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](2025年)』によると、60代・二人以上世帯(金融資産非保有含む)の金融資産保有額は平均2,683万円、中央値1,400万円でした。平均値と中央値には大きな差があり、同じ年代であっても資産状況には格差があることが窺えます。

 

また現役時代の収入や役職に応じた金銭感覚が残っていると、退職後も支出を抑えにくくなることがあります。人付き合いを大切にしたい、以前と同じように振る舞いたいという気持ちは自然なものです。しかし、周囲への見栄から予算を超えた支払いを重ねれば、家計への負担は大きくなります。

 

佐藤さんは今回の食事会をきっかけに、退職後のお金の使い方を改めて見直そうと考えています。

 

「昔の仲間とは、これからも会いたいです。でも、次からは無理をせず、割り勘にします。見栄を張っても仕方がないので」

 

内閣府『令和7年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の生活と意識に関する国際比較調査)』によると、日本の高齢者(60歳以上)で現在生きがい(喜びや楽しみ)を「大変感じている」(22.8%)または「多少感じている」(41.3%)と回答した人は合わせて64.1%に上ります。

 

また、どのような時に生きがいを感じるか(複数回答)という問いでは、「友人や知人と雑談している時」は、42.4%と上位に挙げられています。

 

老後の生きがいや充実感は、決して無理な出費や見栄を張った付き合いによって得られるものではありません。佐藤さんが気づいたように、自分の家計状況に合わせた無理のない範囲で旧友や周囲の人々と良好な関係を保ち、等身大の交流を楽しむことこそが、老後資金を守りながら心豊かな時間を重ねるポイントといえそうです。