大学進学を支える奨学金制度。しかし、借入額や返還について、親子の間で十分に話し合われているとは限りません。大学卒業から約20年が経った今も、父親の言葉が忘れられないという42歳女性。現在は経済的に安定した生活を送っていますが、夫の実家と自分の実家を比べ、複雑な思いを抱えているといます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「お前が返していくんだよ」大学卒業時に父から告げられた〈奨学金240万円〉の返済…42歳女性が奨学金を完済しても「モヤモヤが消えない」ワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

親に勧められるまま、奨学金を借りた大学時代

東京都内で暮らすトモエさん(42歳・仮名)は、会社員の夫(44歳)と小学4年生の娘(10歳)の3人家族です。トモエさん自身も正社員として働いており、世帯年収は約1,300万円。現在は住宅ローンを返済しながらも、比較的余裕のある生活を送っています。

 

そんなトモエさんには、大学時代の奨学金をめぐって、今も忘れられない出来事があります。トモエさんが進学したのは、首都圏の国立大学。実家を離れて一人暮らしを始めました。入学金や授業料は両親が負担してくれましたが、仕送りはありませんでした。生活費について父親から勧められたのが、奨学金の利用です。

 

「父から借りるように言われたんです。学費を出してもらうだけでもありがたいと思っていたので、特に疑問は持ちませんでした」

 

大学では文系学部に所属。塾講師のアルバイトをしており、月に10万円ほど稼ぐこともありました。夏休みは夏期講習で1日フルでバイトに入ることもあり、月に30万を稼ぐことも。時給が比較的高く、授業との両立も難しくなかったといいます。

 

奨学金は月5万円。アルバイト代と合わせて、家賃や食費などを賄っていました。4年間の借入総額は240万円。決して小さな金額ではありませんが、当時のトモエさんには、卒業後の返還について具体的なイメージがありませんでした。

 

「奨学金が借金だということはわかっていました。でも、親から言われるままに申し込んだので、返すときのことまで深く考えていなかったんです」

 

卒業を控えたある日、トモエさんは父親に「これ、ちゃんと返せるかな」と尋ねました。

 

すると父親は、こう答えたそうです。

 

「卒業したら一気に返そう」

 

その言葉を聞き、トモエさんは父親が返還に向けて何か考えているのだろうと思いました。貯金があるのか、別の方法を考えているのか。詳しく確認はしませんでしたが、少なくとも父親も返還に関わるつもりなのだと受け止めていました。

「お前が返していくんだよ」卒業後に知らされた現実

大学卒業後、トモエさんは大手メーカーに就職しました。社会人生活が始まるタイミングで、改めて父親に奨学金について尋ねると、思いがけない言葉が返ってきました。

 

「お前が返していくんだよ」

 

父親は、奨学金は借りた本人が返すものだと説明しました。卒業時に一括返還するという話はどうなったのか。確認しても、具体的な返還計画があったわけではなさそうでした。

 

「自分に金融リテラシーがなかったのも悪いと思います。でも、それなら最初から『卒業したら自分で返してね』と言ってほしかったですね」

 

幸い、就職先の給与は安定しており、月々約2万円の返還が家計を大きく圧迫することはありませんでした。それでも、トモエさんには納得できない部分がありました。

 

「文系だったので、大学時代はアルバイトを増やす余地もあったと思うんです。最初から自分で返すとわかっていたら、もっと働いて、借りる金額を減らしていたかもしれません」

 

もちろん、学業との両立を考えれば、奨学金を利用した判断自体が間違っていたとは限りません。それでも、自分で判断するための情報がなかったことが心残りでした。その後、トモエさんは自分の給料から奨学金を完済しました。しかし、父親とのやり取りは、20年近く経った今も記憶に残っています。