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「2,000万円あるはずなのに…」父の通帳に記されていた送金
「父は、自分の老後に関してお金の心配はしなくていいと言っていたんです。そのときは2,000万円以上の貯金があると。贅沢をするような人ではなかったので、それなりに遺産があると思っていました。それなのに、通帳を確認したら、ほとんど残ってなかったんです」
そう話すのは、埼玉県在住の会社員・加藤誠さん(52歳・仮名)。昨年、79歳の父・博さん(仮名)が亡くなり、相続手続きを進めるなかで、思いもよらない事実を知りました。
博さんは会社員として長年働き、退職後は持ち家で一人暮らしを続け、月17万円ほどの年金を受け取って暮らしていました。派手な暮らしや浪費をしている様子もなく、詐欺や事件に巻き込まれたという話も聞いたことはありませんでした。そのため、父の資産が大幅に減っているとは考えていなかったのです。
ところが、銀行口座を確認すると、残高は40万円ほど。ほかの口座を調べても、想定していた金額には遠く及びません。
内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、65歳以上人口に占めるひとり暮らし(単身世帯)の割合は男女ともに増加傾向にあり、2020年(令和2年)時点で男性15.0%、女性22.1%に達しています。さらに将来推計(令和6年推計)によると、2050年(令和32年)には男性26.1%、女性29.3%へと上昇する見込みです。
このように単身で暮らす高齢者が増えるなか、家計や資産の状況を子どもや家族が把握しにくい世帯も今後さらに増えていくと考えられます。
「父は退職してから15年ほどたっていました。一度、家の屋根や外壁を直していましたが、それだけでここまでお金が少なくなるとは考えにくい」
誠さんは、残された通帳を古いものまで集め、入出金の履歴を確認しました。すると、毎月、決まった時期に5万円が別の口座へ振り込まれていることに気づきます。年金の入金後も、同じ送金が長年にわたって続いていました。
振込先を調べると、それは父の妹・幸子さん(仮名)の口座でした。幸子さんは離婚後、一人で暮らしていました。収入が不安定な時期があり、生活費に困っていたといいます。
誠さんは、父の書類箱から見つかった手紙を読み、送金の理由を知りました。そこには、妹から生活費の援助を頼まれたことや、父が毎月5万円を送ると約束した経緯が記されていました。
さらに、幸子さんが病気で働けなくなった時期には、まとまった金額を送っていたこともわかりました。通帳の出金記録と手紙の日付を照合すると、数百万円規模の援助があったことが確認できたのです。
幸子さんは数年前に亡くなっていました。父は妹が亡くなるまで援助を続け、その事実を誠さんたちに話していなかったのです。
「父と叔母は仲がよく……だからこそ、窮状を無視できなかったのでしょう。これだけ貯金が減れば、自分も大変だったと思うんです。それなのに父は何も言わなかった。家族には心配をかけたくなかったんでしょうね」