金利上昇、建築費高騰……東京都内で家を持つことのハードルはどんどんあがっています。そのようななか、地方への移住を考える人も。実際に妻の実家のある北海道に移住した夫婦の事例から、移住前には気づきにくい「想定外の現実」についてみていきます。
「東京に家を買わなくてよかった…」〈世帯年収1,100万円・貯蓄2,000万円〉都内のマイホームを諦め、妻の実家がある北海道へ。40代公務員夫婦、移住前に気づけなかった「想定外の現実」 ※写真はイメージです/PIXTA

「東京で家を買うのはやめよう」

「東京に家を買わなくてよかった。あのときは、本当にそう思いました」

 

そう振り返るのは、以前、東京で暮らしていた、地方公務員の高橋拓也さん(42歳・仮名)。妻の麻美さん(40歳・仮名)も地方公務員で、2人の子どもがいます。

 

夫婦の世帯年収は約1,100万円。貯蓄は2,000万円ほどありました。共働きで生活に困っていたわけではありませんが、東京で希望する広さの家を買おうとすると、住宅ローンの負担は大きなものになりそうでした。

 

住宅金融支援機構『2025年度フラット35利用者調査』によると、土地付き注文住宅の全国平均所要資金は5,313万円。前年度から306万円増えており、家を建てるには土地代も含めて大きな資金が必要です。住宅価格が上がるなか、購入する地域は家計を左右する選択になっています。

 

「夫婦ともに公務員だから、フルローンもいけますよと不動産会社からは言われました。でも、これから教育費もかかるし、定年後のことを考えると、家にお金をかけすぎるのは不安でした」

 

そんなとき、選択肢として浮上したのが、麻美さんの地元である北海道への移住です。実家には両親が暮らしており、広い敷地にはもう一軒、戸建てを建てられるスペースがありました。

 

「東京よりずっと安く家を建てられるし、お義父さん、お義母さんが隣に住んでいれば、子育ての面でも安心。両親も年を取ってきたので、近くにいられればお互いに心強いと思いました」

 

一方、移住するには仕事の問題もあります。夫婦は移住先の自治体が実施する経験者対象の採用試験を受け、合格。子どもたちが小学校に上がる前に、義実家の隣に家を建てて新生活を始めました。

 

住宅費の差は小さくありません。住宅金融支援機構の同調査では、土地付き注文住宅の平均建設費は首都圏で3,814.3万円、土地取得費は2,590.0万円(参考地)。その他地域の建設費は3,734.0万円、土地取得費は1,016.5万円です。地域ごとの平均値で単純比較はできませんが、実家の敷地を使える夫婦は、土地を購入する費用を抑えられます。土地代が不要になることは、東京で土地から購入する場合との大きな違いでした。

 

とはいえ、東京育ちの拓也さんにとって、北海道は土地勘も人間関係もない場所です。

 

「妻には慣れた場所でも、私には何もかもが初めてでした。何より気候がまったく違う。今でも慣れたとは言い難いです」

 

それでも、子どもたちが学校生活に馴染み、近所にも知り合いが増えるにつれ、暮らしは落ち着いていきました。広い家で暮らし、親の近くで子育てができる。家族で出かける場所も増え、拓也さんも次第に北海道での暮らしを楽しめるようになりました。東京で家を買っていたら得られなかった生活に、夫婦は満足していたのです。