(※写真はイメージです/PIXTA)
「ここのお惣菜、おいしいんだけど…」夫の一言に怒りが爆発
友人たちと会ってから数日後のことです。アツコさんは普段から、夕食にデパ地下の惣菜をよく利用しています。
「デパ地下のお惣菜っておいしいですし、閉店間際だと半額になっていることもあるんです」
その日の夕食も、会社帰りに半額で購入したデパ地下の惣菜と、アツコさんがさっと作った料理を食卓に並べました。すると、食事を始めたコウジさんがこんなことを言ったのです。
「ここのお惣菜、おいしいし、半額でうれしいんだけど、タンパク質が足りていないよね」
その言葉を聞いた瞬間、アツコさんの怒りが爆発しました。
「だったらお前が作れ! ゆで卵でも作って食べたら? 10分でできるけど!」
普段は他人に強い言葉を使うことのないアツコさんですが、このときばかりは抑えられませんでした。
「夕食を用意するだけでも大変なのに、何で夫の筋肉のことまで考えなきゃいけないんでしょうか」
突然強く言われたコウジさんは驚き、「そんなつもりで言ったんじゃない」と弁解しました。しかし、アツコさんの怒りは収まりません。
「夫には自分の健康や体形を気にする時間があって、私は自分のことを考える余裕すらない。私だって運動したいし、好きなことをする時間が欲しいんです」
コウジさんは「俺だって月曜と水曜は塾の迎えに行っているだろう」と反論しました。それに対してアツコさんは、「塾は会社と家の途中にあるよね? 途中下車するだけだよね?」と問い詰めました。
夫が育児をまったくしていないとは思っていません。ただ、週2回の塾のお迎えだけで、日々の家事や育児の負担が均等になるわけではありません。
30~40代女性の体力が低下。運動する「時間」は誰がつくるのか
スポーツ庁が2026年3月に公表した「令和7年度スポーツの実施状況等に関する世論調査」によると、週1日以上運動・スポーツを実施する割合は、男性が55.0%、女性が48.8%。特に20~50代の子育て・働き盛り世代の女性で低い傾向がみられます。
また、総務省「令和3年社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもがいる共働き世帯(夫婦ともに雇用されている世帯)では、1日当たりの家事関連時間は妻が6時間32分、夫が1時間57分と、約3.4倍の差があります。家事関連時間には、家事、育児、買い物、介護・看護が含まれます。
アツコさん夫婦の場合、月1万円のジム代が家計を圧迫しているわけではありません。アツコさんがヨガやピラティスを再開する経済的な余裕もあります。問題は、そのための時間をどう確保するかということでした。
今回の一件をきっかけに、アツコさん夫婦は家事・育児の分担を見直すことにしました。コウジさんはジム通いを続けながら、子どもの送迎や夕食の準備をこれまで以上に担うことに。また、長女の塾のプリント整理や予定管理も、できるところから本人に任せるようにしました。家族全員で役割を見直し、アツコさんも自分の時間を確保できるようにしていくそうです。
しかし、こうした問題は、家庭内の工夫や話し合いだけで解決できるのでしょうか。
スポーツ庁は公式サイト「女性のスポーツ参加サポートページ」で、30~40代女性には、運動したくても仕事や家事が忙しく、時間に余裕がない人が多いことを指摘。そのうえで、日常生活の「すき間時間」や「ながら」でできる運動を紹介しています。もちろん、こうした工夫は運動を始めるきっかけになるでしょう。ただ、限られた時間をさらにやりくりすることだけが、解決策なのでしょうか。
運動する機会を増やすだけでなく、運動するための時間をどう確保するのか。家庭内の役割分担の見直しだけに解決を委ねるのではなく、長時間労働の是正や子育て支援の充実など、誰もが自分のための時間を持てる社会をどうつくるのかが問われています。
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