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孫が生まれてから、週末の過ごし方が変わった
きっかけは、長男夫婦に子どもが生まれたことでした。マサトさん夫婦にとって初孫です。長男一家は車で1時間ほどの場所に住んでおり、孫が生後半年を過ぎたころから、週末になると遊びに来るようになりました。
最初は月に1回ほど。キヨミさんも孫の訪問を楽しみにしていて、長男一家が来る日は少し豪華な昼食を用意することもありました。ところが、孫が1歳になるころには、訪問は月2回、3回と増えていきました。ときには2週続けて遊びに来ることもありました。
マサトさんはうれしくて仕方がありません。孫を抱っこしたり、近所の公園へ連れて行ったり、おもちゃを買ったり。週末に長男一家が来ることを楽しみにするようになりました。
一方、キヨミさんにとっては、次第に週末が休息の時間ではなくなっていきました。長男一家が来る日は朝から掃除をし、昼食を用意します。孫の相手をしながら食事を片づけ、長男夫婦が買い物に出かけるときには孫を預かることもありました。
もちろん孫はかわいい。それでも長男一家が帰るころには、ぐったりしていたといいます。もともとキヨミさんは、一人で過ごす時間を大切にしてきた人です。家族であっても頻繁に顔を合わせなくていいし、会うときには楽しく過ごせればそれで十分。そんな考え方でした。
そこでキヨミさんが考えたのが、土日にパートのシフトを入れることでした。スーパーは土日が忙しく、人手も必要です。職場からも歓迎されました。土日に働く代わりに平日に休みを取れば、誰にも気を使わず、自分の好きなように過ごせます。
内閣府の「令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査」では、60歳以上の人が日常生活で家族や知人から頼られる内容として、「子や孫の世話」を挙げた人は26.0%でした。
「孫はかわいい。でも、毎週は疲れる」
ある金曜日、翌日に長男一家が来ると聞いたキヨミさんが、「明日、私仕事だから」と言いました。マサトさんは思わず聞き返しました。
「また土曜日? 最近、ずいぶん土日に入るね」
少し間を置いて、キヨミさんが答えました。
「だって、家にいると疲れるんだもの」
マサトさんには、キヨミさんが言っている意味が分かりませんでした。
「孫はかわいいよ。でも、来たらずっと相手をすることになるでしょう。ご飯の準備もあるし、息子たちは休めるかもしれないけど、私は休めないの。私はもともと、一人の時間が好きなの。それはあなたも知っているでしょ?」
マサトさんは驚きました。自分は孫が来ることをただ楽しみにしていました。その裏で妻が食事を用意し、片づけ、孫の世話まで引き受けていたことを、ほとんど意識していなかったのです。
孫の顔を見せることが「親孝行」だと思っていた息子
その後、マサトさんは長男に事情を話しました。すると、長男も驚いた様子だったといいます。
「孫の顔を見せに行けば喜んでもらえると思ってた」
長男夫婦は、初孫の誕生を両親が喜んでいたこともあり、できるだけ会わせてあげたいと考えていました。離れて暮らす親に頻繁に孫の顔を見せることが、一つの親孝行になると思っていたそうです。特にマサトさんが毎回うれしそうに迎えてくれるので、両親ともに楽しみにしているものと考えていました。しかし、キヨミさんの負担を聞き、長男も考えを改めました。
それからは、訪問する前に両親それぞれの都合を確認するようになりました。また、昼食を済ませてから遊びに来たり、短時間で帰ったりするなど、負担をかけない工夫もするようになったそうです。マサトさんも、孫が来る日は自分で食事を用意するなど、以前より積極的に動くようになりました。ただ、キヨミさんは今も土日にパートのシフトを入れています。
長男一家の訪問が以前ほど頻繁ではなくなり、マサトさんも家事を引き受けるようになったのだから、もう土日に働く必要はないのではないか。そう思ったマサトさんが尋ねると、キヨミさんはあっさり答えたそうです。
「土日に働いて、平日に休むほうが好きなの。どこに行っても空いているし、一人でのんびりできるから」
「妻は昔からそういう人なんですよね。私も一人の時間が好きなほうですが、孫のことになると、妻も同じように喜んでいると勝手に思い込んでいました」
孫がかわいいことと、毎週末のように会いたいことは別。また、家族との時間を大切に思うことと、一人の時間を優先することも矛盾しません。親孝行のつもりでしていることが、本当に親の望んでいることなのか。家族だからこそ、相手が心地よいと感じる距離感を尊重する必要があるのかもしれません。