子どもの進学や独立を機に、長年家庭に入っていた専業主婦が就労を始めるケースは少なくありません。事例を通じて、その就労が単なる社会復帰にとどまらず、婚姻関係の清算を見据えた「経済的自立の足がかり」となっている実態と、熟年離婚の背景について解説します。※プライバシー保護のため、事例の人物名はすべて仮名です。
「熟年離婚するためです」51歳まで専業主婦だったが…年収280万円で働きはじめた妻。焦る夫を尻目に限界を迎えた“積年の恨み” (※写真はイメージです/PIXTA)

50代のリアルな熟年離婚

長期間連れ添った夫婦が離婚するケースは一定数存在します。厚生労働省『令和6年人口動態統計』によると、2024年に離婚した夫婦のうち、同居期間20年以上だったのは4万353件です。内訳は20~25年が1万7,789件、25~30年が1万796件、30~35年が6,261件、35年以上が5,507件。ハナさんがいま離婚をしたとすると、20~25年に当たります。

 

長期間のブランクがある専業主婦が50代で自立を目指す場合、最大の壁となるのは「毎月の生活を維持できるだけの勤労収入」を確保できるかどうかにあります。総務省『労働力調査(令和5年)平均結果』によると、45〜54歳女性の役員を除く雇用者のうち52.2%、55〜64歳では62.4%と、過半数がパートや契約社員などの非正規雇用で占められています。

 

さらに国税庁『令和5年分 民間給与実態統計調査』を見ても、女性・非正規雇用の平均給与は約166万円にとどまっており、長年家庭に入っていた女性が単身生活を維持できる水準を自力で獲得するハードルは高いのが現実です。そうした就業環境にあって、ハナさんのようにスキルを活かして年収280万円という安定した収入を確保できたことは、離婚後の生活を成立させるための土台となるでしょう。

 

さらに、婚姻期間中に築いた夫婦共有財産の財産分与が当面の生活防衛資金として組み合わさることで、50代での単身生活が現実的な計算として成り立ちます。

 

どれほど月日が流れ、日々の暮らしが平穏に見えていたとしても、最も助けを必要としていた時期に刻まれた傷が自然に癒えることは難しいのかもしれません。「産後の恨みは一生」――夫が無神経に積み重ねてきた過去の言動が、数十年後に自らの日常を根底から覆す現実は、決して珍しいことではないのです。

 

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