夫婦喧嘩は、夫婦だけの問題とは限りません。子どもの前では、夫婦それぞれの不満や主張が思わぬ形で伝わっていることがあります。離婚を考えるほど関係が悪化したとき、子どもは何を感じているのでしょうか。家族の関係を考えるうえで、見過ごせない問題です。
「お願いだから離婚して!」〈年収850万円・52歳夫〉と〈49歳パート妻〉の夫婦喧嘩に17歳娘が絶叫…両親が知らなかった「子どもの本音」 ※写真はイメージです/PIXTA

娘「私のせいにしないで」、夫婦が初めて黙った

陽菜さんは、泣きながら話しました。

 

「ずっと聞いてた。私の進路の話になると、いつも喧嘩するじゃん」

「私のためにお金が必要とか、私のために働いてるとか、そういうこと言わないでよ」

 

そして、2人にこう続けました。

 

「私のせいにしないで。もう2人が喧嘩してるの、聞きたくない」

 

誠さんも智子さんも、言葉が出ませんでした。2人にとっては、教育費や進路をめぐる意見の違いでした。しかし、陽菜さんにとっては、自分の将来を話すたびに両親の関係が悪化する状況だったのです。

 

その夜、誠さんと智子さんは初めて、陽菜さんを交えずに夫婦で話しました。これまで2人は、娘のために何が必要かを話しているつもりでした。しかし実際には、教育費、家事、仕事への不満を、娘の進路をきっかけにぶつけ合っていた部分もありました。

 

その後、夫婦は娘の前で言い争わないことを決めました。進学費用についても、必要な金額を洗い出し、それぞれがどう負担するのかを具体的に話すようにしました。

 

陽菜さんのことはさておき、正直、夫婦関係は冷え切っていると感じています。離婚に至っても仕方がない――お互いに考えていますが、結論はまだ出ていません。ただ、陽菜さんの「お願いだから離婚して!」という言葉を聞いたことで、2人は初めて、夫婦の問題が娘にも影響していたことに気づいたといいます。

 

国立社会保障・人口問題研究所『2022年生活と支え合いに関する調査』によると、18歳未満の子がいる世帯の63.9%(とても重い18.9%、やや重い45.0%)が教育費の支出に負担感を示しています。また文部科学省『令和5年度子供の学習費調査』が示すように、進学に伴う教育費負担は小さくありません。

 

子どもの進路を巡る夫婦間の対立は、知らず知らずのうちに子どもの心を傷つけることがあります。お互いの負担感を可視化し、具体的な話し合いを重ねることが大切です。