(※写真はイメージです/PIXTA)
先に亡くなった母の「死亡保険金1,000万円」の使い道
4年前に母を病気で亡くして以来、一人暮らしを続けていた父のシゲルさん(享年69)。先月、自宅で心不全のため急死し、一人息子のシンイチさんが遺品整理と各種手続きのために実家を訪れていました。
生前のシゲルさんの公的年金は月額約11万円。贅沢を好まず、身なりも控えめだったため、日常の暮らしぶりは質素に見えました。また、4年前に亡くなった母は非常に交友関係が広く、義理を重んじる人でした。生前、付き合いで加入していた生命保険があり、母の死後に1,000万円の死亡保険金がシゲルさんの口座へ振り込まれています。
「月11万円しか年金を受け取れなくても、母さんの保険金1,000万円があるから大丈夫だろう」。そうシンイチさんは思っていました。
銀行口座の確認やサブスク等の解約を進めるには、シゲルさんの各種パスワードを知る必要がありました。特にスマホを早く開かねばと思いつつも、シンイチさんは父のパスコードを知りません。誕生日や母との結婚記念日など、思い当たる数字をいくつか試してみたもののロックは解除できず、途方に暮れます。
その後、書斎の遺品整理を再開したときのことです。父が使っていた文机を動かそうと覗き込んだ際、机の天板の裏側に、紙切れがセロハンテープで貼られているのを見つけました。剥がしてみると、そこには「スマホ」「銀行」といった項目とともに、数字や記号の組み合わせが几帳面な手書き文字で一覧になって残されていたのです。
そのコードをスマホに入力すると、ロックは解除。しかし、中を調べるうちにシンイチさんは驚いてしまいました。
父のLINEには、「A子さん」という女性とのやりとりが残されていました。二人は地域公民館の集いを通じて知り合ったようで、シゲルさんは彼女との再婚を真剣に考えていた様子。LINEを遡ると、シゲルさんの執心ぶりが露骨に浮かび上がってきました。
「結婚したら、A子さんはなにもしなくていいから。一緒にいてくれるだけで幸せだよ」
「この前贈ったカバン、とても似合っていたね。やっぱりA子さんは青がよく似合う」
A子さんからのメッセージが入ると、いつも数分後には返信をしていたシゲルさん。「俺が送っても3日くらいはほったらかしのこともあるのに……」と心の中で突っ込みながら、ほかのやりとりも確認します。バッグやジュエリー、旅行費用など、彼女へかなり貢ぎこんでいた様子がわかるメッセージが幾度となく送られていました。対するA子さんから父を誘ったり、父の誕生日にプレゼントを贈ったりした様子もなく、その返信は、「ありがとうございます」「またお願いしますね」といった短く素っ気ないものばかり。
不審に思ったシンイチさんがシゲルさんの通帳と銀行アプリを確認すると、衝撃的な事実が判明しました。母が遺した1,000万円の保険金口座の残高は、ほぼゼロになっていたのです。保険金は、ここ数年のあいだにA子さんへのプレゼント購入費や現金振り込みとして消え去っていました。
「父さんは再婚して第二の人生を歩むつもりで本気だったのかもしれない。でも、相手の女性はただ父さんを金づるとしか思っていなかったんじゃないか……」
書斎のメモから偶然辿り着いたスマホに残されていた一方的な好意のメッセージと、空っぽになった口座。母が遺した1,000万円を使い果たし、亡くなる直前まで女性からの返信を待ち続けていた父の哀れな姿を知り、シンイチさんは微妙な面持ちです
「母を想うと複雑な気持ちです。父さん、こんなことは知りたくなかったな……」