文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」によると、私立中学校の年間学習費総額は150万円を超え、私立高校でも100万円を超えています。中学受験前の塾代や大学の学費まで含めれば、子ども1人にかかる教育費はさらに大きくなります。東京都内に住む〈世帯年収1,600万円〉のユウコさん(49歳・仮名)は、大学1年生の娘から突然、「お母さんごめんね、こんなに課金してもらったのに」と謝られました。娘が抱えていたのは、兄や周囲の学生と自分を比べることで生まれた、思いがけないコンプレックスでした。
「お母さん、ごめんね。私、こんなに課金してもらったのに」「か、課金? 課金って何?」…〈世帯年収1,600万円〉49歳共働き母が、私立大生娘のコトバに驚いたワケ ※写真はイメージです/PIXTA

小3から中学受験塾、私立女子校を経て大学へ

ユウコさん(仮名・49歳)は会社員の夫(51歳)との共働きで、世帯年収は約1,600万円。2人の子どもがいます。長男は21歳で、国立大学の理系学部に在学中。長女のアリサさん(仮名・19歳)は、小学3年生から中学受験塾に通い、中高一貫の私立女子校を経て、現在は都内の私立大学1年生です。

 

文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」によると、私立中学校に通う子どもの年間学習費総額は約156万円、私立高校でも約118万円となっています。中学受験前の塾代や大学の学費まで加えれば、家庭の負担はさらに大きくなります。

 

「改めて考えると、かなりかかっていますよね。でも、子どもたちに『これだけ払ったんだからいい学校、いい会社に入って』と思ったことはありません。できる範囲で選択肢を用意してあげたいと思ってきました」

 

大学に進学したアリサさんは、自分が小学生のころに通っていた中学受験塾でアルバイトを始めました。そこにはさまざまな大学の学生が働いています。地方の公立高校から国立大学へ進学した学生や、奨学金を利用しながら大学に通う学生もいました。

 

「娘から、『この子、地方の公立から○○大に入ったんだって』『すごく頭のいい子がいるんだよ』という話をよく聞いていました。楽しそうだったので、優秀な人たちに囲まれて、いい刺激を受けているんだろうなと思っていたんです」

 

ところが、アリサさんの胸の内は少し違っていました。

「お母さんごめんね、こんなに課金してもらったのに」

ある日、アリサさんが珍しく落ち込んだ様子で帰宅しました。ユウコさんが「何かあった?」と尋ねても、最初は「別に」と答えるだけ。ところがその日の夜、ぽつりと言いました。

 

「お母さん、ごめんね。私、こんなに課金してもらったのに」

 

「か、課金? 課金って何?」

 

ユウコさんが聞き返すと、アリサさんは、小学生のころから自分にかけてもらった教育費のことだと説明しました。

 

「小3から塾に行かせてもらって、中学も高校も私立で、大学受験でも塾に行って。それで今も私立じゃん」

 

塾のアルバイト先には、地方の公立高校から国立大学へ進学した学生もいます。なかには、奨学金を利用しながら大学生活を送っている学生もいました。

 

日本学生支援機構の「令和6年度学生生活調査」によると、大学学部昼間部で何らかの奨学金を受給している学生は51.1%。大学生の約2人に1人が奨学金を利用しています。

 

それまでアリサさんの周囲には、中学受験をして私立中高へ進み、塾に通いながら大学受験をする友人も少なくありませんでした。

 

しかし大学に入り、アルバイトを通じて違う環境で育った同世代と知り合ったことで、自分が親にかけてもらったお金を急に意識するようになったそうです。

 

「同じ年なのに、奨学金を借りて私よりずっと偏差値が高い大学に通ってる子もいる。地方の公立から国立に入った子もいる。それに比べたら、私はずっとお金をかけてもらってるのに……」

 

そして、涙ながらに兄と自分を比べ始めました。

 

「お兄ちゃんは国立の理系じゃん。コスパ的には合格なんでしょ?」

 

ユウコさんは驚きました。

 

「コスパって……。私たちは兄妹をそんなふうに比べたことは一度もないんです。でも娘のなかでは、『同じようにお金をかけてもらったのに、兄は国立、自分は私立』ということが引っかかっていたみたいです」

 

ユウコさんは、「元なんて取らなくていいんだよ」「あなたが行きたくて選んだ大学でしょう」と励ましました。アリサさんは以前から、現在通う大学の学部に興味を持ち、そこを目標に受験勉強を続けてきたからです。ユウコさんがいくら励ましても伝えても、アリサさんの表情はなかなか晴れなかったといいます。