(※写真はイメージです/PIXTA)
「老後資金が足りない」と焦る夫
「先月まで卵の値段で10円単位の文句をいっていた人が、急にこんな高額な買い物をするなんて……開いた口が塞がりませんでした」
地方都市の戸建て住宅で暮らすパート主婦のナナコさん(50歳)は、テーブルに置かれた高級腕時計の箱を指さしながら、深いため息をつきます。
夫のサトシさん(52歳)は中堅メーカーに勤める会社員で、月収は約46万円。2年前に一人息子(現在25歳)が就職して独り立ちし、残る住宅ローンは700万円となりました。ナナコさんも週に数日パートに出て、家計を助けています。
息子の自立をきっかけに、サトシさんの頭の中を占領するようになったのが老後資金への不安でした。もともと真面目で倹約家だったサトシさん。すでに500万円ほどの貯蓄はあったものの、「老後2,000万円ともいうし、定年後も働く予定だが、定年までのあと10年で、残りの1,500万円を貯め切らなければならない」と焦燥感にとらわれたのです。
そこから、サトシさんの猛烈な節約生活が始まりました。
毎週末になるとスーパーのチラシを穴があくほど比較し、10円でも安い食材を求めてハシゴ。夕食の買い物から帰ってきたナナコさんが「牛肉が安かったの」と伝えると、「味を付けたら豚と牛の違いもわからないし、俺はバカ舌だから豚肉で十分だよ」というのです。
さらには自宅の電気代を削るため、夏場のエアコン設定温度は厳格に28度固定。冬場はコタツ以外の暖房を禁じ、洗面所の照明をこまめに消して回る徹底ぶりでした。ナナコさんの美容室の周期にまで「半年に1回でいいんじゃないか」と口を出し、自分には毎朝の通勤時に130円の缶コーヒーを買うことすら禁じていました。
ナナコさんが「そこまでストイックにやって幸せ? いまの生活も少しは楽しまないと息が詰まるわよ」と呆れ顔で諭しても、サトシさんはどこ吹く風。「60歳までに2,000万円貯めるには、年間150万円、月12万5,000円の積み立てが必要なんだ。今我慢すれば老後に笑えるんだから」。そう、自室でExcelの資産計算表を眺めては悦に入っていたのです。
ところが、そんな生活が2年ほど続いたある日、事態は180度急転します。