(※写真はイメージです/PIXTA)
ほとんど接点のなかった叔父を、甥が支えることに
健一さん(仮名)は、母の弟である叔父とほとんど会ったことがありません。叔父がどこでどう暮らしてきたのか知らないまま、何十年も過ぎていました。
その叔父が75歳で入院し、病院から「親族の方ですね」と連絡が入りました。叔父に配偶者も子もなく、両親も亡くなっています。きょうだいは健一さんの母だけ。ただ、母は80代で体も弱っているため、実際に動けるのは健一さんしかいません。退院後は自宅を売却して施設に入ることになりました。判断能力の低下も心配される状況でした。
叔父の暮らしは、母に代わって健一さんが支えることになります。相続人は母一人。それなら、遺言までは必要ないようにも思えます。
ただ、母も健一さんも、叔父の人生をほとんど知りません。これまでに親しくしていた人や支えてくれた人はいたのか。その人に財産を残したいと考えたことがあったのか――。叔父自身も、昔のことをはっきり思い出せない様子でした。
兄弟姉妹には遺留分がありません。第三者に全財産を残すという内容が記載された有効な遺言があれば、相続人が母一人でも、母は何も受け取れないのです。争う相続人がいないからと言って、相続への備えがいらないわけではありません。
過去の遺言は、どこまで調べられるか
配偶者や子がいないことは戸籍で確かめられますが、遺言はそうはいきません。
公正証書遺言は、生前であれば、遺言者本人の意思に基づいて検索できます。本人の委任を受けた代理人が手続きをすることもありますが、相続人の母や甥が、その立場だけで調べることはできません。
法務局の自筆証書遺言書保管制度は、2020年7月10日に始まりました。利用していても、生前に閲覧できるのは叔父本人だけです。一方、自宅や誰かの手元にある自筆証書遺言には、存在を一括して照会する仕組みがありません。手元を探して見つからなくても、「存在しない」とは言い切れません。
相続人が一人だから何もしないのか。調べられる範囲だけでも過去の遺言を確認するのか。調査に加えて、現在の意思を新しい遺言に残すのか。今回考えたのは、このどこまで備えるかでした。