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妻の収入増を素直に喜べない理由
一家の大黒柱という自負。そのことが、怠慢になっていた部分もありました。
「家のことは、全面的に妻に任せていました。私は外で仕事をしている、稼いでいる。だから家事や子育ては、妻に――役割分担。ただ妻も稼ぐようになったら、そういうわけにはいかないと……」
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』(2022年)によると、夫婦の家事分担割合は妻が80.5%を占め、平日の平均家事時間も妻の247分に対し夫は47分にとどまります。特に妻が非正規雇用の世帯では、夫の平日の家事時間は39分とさらに短くなります。
一方で、同調査では「夫も家事や育児を平等に分担すべきだ」という考えに対する賛成割合が86.7%に達しています。「106万円の壁」撤廃に伴う妻の就労拡大や収入増は、単なる家計の足しにとどまりません。従来の「夫=大黒柱、妻=家事育児」という固定的な役割分担を見直し、夫側も家庭内での責任と行動を再構築することが強く求められています。
「給与が増えたら、どうするつもり?」
大輔さんが尋ねると、陽子さんは「半分は貯めたい。残りは家計に入れようかな」と答えました。その言葉を聞いて、少し安心したといいます。
「最近、身の回りに多いんです。子育てがひと段落したのをきっかけに離婚する知り合いが。たいてい、奥さんに捨てられるパターン。自分もそうなりかねないと思いました」
厚生労働省『令和4年度 離婚に関する統計の概況』によると、令和2年(2020年)における総離婚件数19万3,253組のうち、同居期間が20年以上の夫婦による離婚は3万8,981組に上り、同居期間別の構成割合では全体の21.5%を占めています。
子育て期を終え、妻が経済的自立を果たす時期は、夫婦間の歪みが表面化しやすい節目といえます。「106万円の壁」撤廃に伴う働き方の変化は、単なる収入増にとどまらず、夫婦が対等なパートナーシップや家事負担の在り方を再構築するための契機になりそうです。