親の実家で気づく異変。日常の些細な変化の背景には、加齢に伴う生活の負担や将来への強い不安が潜んでいることがあります。ある親子の事例から、離れて暮らす親の見守り方や対策を考えます。
52歳娘「お母さん、なにこれ!?」と仰天。〈年金月14万円・79歳母〉実家で見つかった「大量の未使用品」の謎 ※写真はイメージです/PIXTA

母に「ネットスーパー」を勧めたら

陽子さんが「ネットスーパーを使ったら?」と提案すると、和子さんは首を横に振りました。

 

「そんなに毎回頼むの、もったいないでしょう」

「でも、重いものを持って帰る必要ないよ」

「それに、お金を使うと減るから」

 

そこで陽子さんは、母がなぜそこまで支出を抑えようとするのかを聞きました。すると、和子さんはしばらく黙ったあと、

 

「お父さんが亡くなってから、何かあったときのお金は残しておかないとって思うようになったの」

 

夫を亡くしたあと、病気や介護が必要になったときのことを考えるようになったといいます。

 

「人には迷惑かけたくないからね」

 

年金は月14万円。生活できないわけではありません。しかし、将来の支出が不安で、「今使っていいと考えるお金」は極端に減りました。その結果、買い物の回数は減り、日用品は安いときにまとめ買いする。一方で、食事は簡単なもので済ませる――そんなライフスタイルになったのです。

 

陽子さんは買い物の負担を減らすことを考えました。注文を陽子さんが聞いて、届け先を和子さん宅にする。「これなら、お金を使いすぎる心配も少ないでしょう」そう話すと、和子さんは「それならお願いしてみようかな」と答えました。

 

その後、陽子さんは電話で「元気?」と聞いたり、買い物の注文を聞くだけでなく、たまに遊びに行った際には、目の前でネット注文をするようにしているといいます。

 

「興味はあるんでしょうね。私が注文している様子をじっと見ている。そのうち、向こうのほうから“自分でやってみようかしら”と言うのを待っているんです」

 

総務省の『令和7年 通信利用動向調査報告書(世帯編)』によると、70〜79歳のインターネット利用率は71.9%に達しており、シニア世代にもネット利用が定着しつつあります。しかし、同年代の利用目的は「電子メールの送受信(71.2%)」や「検索サービスの利用(63.0%)」が上位を占め、買い物などの生活支援サービスの活用は発展途上にあります。

 

和子さんのように加齢に伴う外出や重い荷物の運搬が負担となる高齢者にとって、ネット通販やネットスーパーは生活を支える強力な手段。家族が寄り添い操作に親しむ機会を作ることで、デジタル技術が高齢者の自立した暮らしを助ける第一歩となると期待されます。