(※写真はイメージです/PIXTA)
「買うのはもったいない」が口癖の義姉
アサミさんは会社員の夫・ショウヘイさん(47歳・仮名)と高校生の娘・ノノカさん(17歳・仮名)との3人暮らし。夫婦共働きで、世帯年収は約1,000万円です。
ショウヘイさんには3歳上の姉・カオルさん(50歳・仮名)がいます。カオルさんも夫婦共働きで、世帯年収は約1,400万円。大学生の娘が1人います。経済的に困っている家庭ではありません。しかも、何に対しても倹約家というわけではありませんでした。外食や旅行には比較的お金をかけ、自分へのご褒美として洋服や化粧品を買うことも少なくなかったそうです。
一方で、使用頻度が低いものについては「わざわざ買うのはもったいない」という考えが強く、旅行用品やアウトドア用品などはレンタルや人からの借り物で済ませることが多かったといいます。
「義姉は、お金がないから借りるという感じではないんです。自分が価値を感じるものには結構使う。でも、“一度しか使わないものにお金を払うのは損”という感覚がすごく強いんですよね」
アサミさん自身も、必要のないものまで購入する必要はないと考えていました。しかし次第に、カオルさんの「合理的にお金を使う」という考え方が、親族や友人の私物まで当然のようにあてにすることにつながっているように感じ始めます。しかもお礼の一つもないことに「なんて非常識な人なんだろう」と思いました。
お気に入りのスーツケースを貸して懲りたワケ
なかでも忘れられないのが、海外旅行のために大型のスーツケースを貸したときのことです。アサミさんが貸したのは、長く使うつもりで購入したスーツケースでした。旅が好きなアサミさんにとって、それは単なる旅行用品ではありません。これまで一緒にさまざまな場所へ出かけてきたお気に入りのスーツケースで、使ううちについていった傷さえも、旅の思い出として愛着を感じていました。本当は貸すのが嫌だったのですが、夫経由でお願いされ、夫も「貸すよ」と言ってしまった手前、断ることが難しかったと振り返ります。
旅行から戻ったカオルさんは、空港で荷物が一時行方不明になり、危うくロストバゲージになるところだったものの、無事に見つかったと笑いながら話したそうです。アサミさんは、その軽い調子に驚きました。本人の持ち物なら笑い話にもできます。しかし、借り物です。もし見つからなければ、中身だけでなくスーツケースそのものまで戻ってこなかった可能性があります。さらに、返却されたスーツケースには以前にはなかった擦り傷や汚れもついていました。それを指摘すると、カオルさんから返ってきたのは、「傷はもとからついていたし、汚れも味になるでしょ?」という言葉でした。
「味になるかどうかを決めるのは、持ち主の私でしょう。そのとき、もう二度と貸さないと思いました」
細かな傷や汚れなら、わざわざ弁償を求めるほどではないかもしれません。それでも、物は使えば少しずつ傷みます。借りる側はお金を使わずに済みますが、貸す側は購入費用だけでなく、汚損や紛失のリスクまで負っていることになります。
友人とも少しずつ疎遠に
カオルさんは、友人との間でも似たようなことがあったそうです。キャンプ用品をまとめて借りたものの返却が遅れ、友人から催促された際には、「すぐに使うわけでもないのに」と不満を口にしていました。また、娘用の服を借りて汚してしまったこともあったといいます。クリーニングには出したものの、その後、その知人とは次第に疎遠になりました。
カオルさん自身は「昔の友達と疎遠になってしまった」と話していましたが、アサミさんには、物を借りることそのものよりも、「貸してもらうことを当然のように考える態度」が周囲を疲れさせているように見えました。
「私は正直、義姉の感覚がよくわからないんです。友人や知人から何かを借りたら、汚していないか、傷をつけていないか気になりますし、きちんとお礼もしないと、と思います。その気遣いまで考えたら、自分でレンタルするなり買うなりしたほうが、むしろ楽なんですよね」
アサミさんにとって、物を借りれば「タダで済む」というわけではありません。お金の代わりに、相手への気遣いや、汚損・破損への心配が生まれます。だからこそ、カオルさんが人から借りることを積極的に選び続ける感覚が、なかなか理解できなかったといいます。そんななか、決定的な出来事が起こりました。