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70代から使うために、今は運用しておく
佐藤さんにとって重要なのは、退職金2,400万円を「いつ使うお金なのか」を決めることでした。
「今すぐ使う予定がないから投資する。至極当たり前のことです。必要になったら売って現金にしたらいい。そう考えています」
佐藤さんは、投資したお金をずっと持ち続けるつもりでもありません。70歳を過ぎたころから、旅行や自宅の修繕などに使う予定です。そのため、株式や投資信託についても、値上がりだけを期待しているわけではありません。必要になった時点で少しずつ売却し、現金化することを考えています。
「70歳になったら、全部使えるお金に変えていくわけではありません。そのときの生活に合わせて、必要な分だけ現金にするつもりです」
子どもは2人いますが、できるだけ多くの資産を残そうとも考えていません。
「まず自分たちが使う。必要なことにはきちんとお金を使う。それでも最後に残ったものがあれば、子どもに渡せばいいと思っています」
佐藤さんが周囲のアドバイスに耳を貸さなかったのは、「65歳でも投資を続けるべきだ」と考えていたからではありません。自分の家計では、退職金をすぐに使う必要がない。そのお金を10年以上先に使うかもしれない。だから、その期間を運用に充てる。ただそれだけだったのです。
金融庁も、NISAについて、長期・積立・分散投資を通じて資産形成を行う制度として位置付けています。一方で、投資には元本割れの可能性があります。退職後の資産運用では、投資額だけでなく、生活費として確保する現金や、いつ使う予定なのかまで含めて考える必要があります。
佐藤さんにとって、退職金の運用は「いくら増やすか」から始まった話ではありません。「いつ、何に使うのか」を先に考えた結果、その間の資金をどう置いておくかを決めたものです。
金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査(2025年)』によると、二人以上世帯で老後の生活資金源として「金融資産の取り崩し」を挙げる割合は26.9%。また、60代の金融商品保有状況では株式が45.0%、投資信託が35.0%となっており、リタイア後も運用を継続する世帯は少なくありません。
退職金を「当面の生活費」と「将来のための運用資金」に明確に切り分け、リスクヘッジを行いながら計画的に活用する――資産寿命を延ばし豊かな老後を過ごすためのひとつの選択といえるでしょう。
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