(※写真はイメージです/PIXTA)
「自分の感覚で決めていた」上司が謝罪
ユミさんの話を聞いた上司は、しばらく考えたあと、「確かにそうだね。本人に聞かずに、自分の感覚で『このほうがいいだろう』と決めていた。配慮しているつもりだった。ごめん」と謝りました。
上司自身、家庭の事情がある社員に出張を頼むことは「負担を押し付けること」だと思っていたといいます。ユミさんも、上司に悪意があったとは感じませんでした。
「謝ってほしくて言ったわけではありません。理由がわかっただけでもよかった。でも、これからは一度聞いてほしいと伝えました」
数か月後、ユミさんにも地方出張の話が持ちかけられました。帰宅後、夫に伝えると、「出張? 珍しいね! 行ってきなよー」と、あっさりした返事が返ってきたといいます。夫と予定を確認したところ、子どもの送迎なども問題なく分担できることがわかり、ユミさんは出張に参加しました。そこで改めて感じたのが、「行けるかどうか」と「最初から声をかけてもらえないこと」はまったく違うということでした。
「毎回行けるわけではないと思います。でも、今回みたいに行けることもある。これまでだって、聞いてもらえていたら行けた出張があったかもしれません」
“配慮”が、将来のキャリアや収入に影響することも
今回のようなケースは、単なる「気遣いの行き違い」だけでは済まないこともあります。
男女雇用機会均等法では、性別を理由として配置などで差別的な取り扱いをすることを禁止しています。厚生労働省の指針では、この「配置」には業務の配分も含まれます。
もちろん、今回のユミさんのケースが直ちに法令違反に当たるとは限りません。ただ、本人に確認しないまま「子どもがいるから難しいだろう」と判断し、出張や新規案件などの機会から外し続ければ、担当できる仕事や経験に差が生じる可能性があります。その積み重ねが評価や昇進に影響すれば、長期的には収入の差にもつながりかねません。
2026年4月施行の改正女性活躍推進法では、常時雇用する労働者が101人以上の企業について、男女間賃金差異と女性管理職比率の情報公表が必須となりました。男女の賃金差は、「同じ仕事なのに給料が違う」という問題だけで生じるものではありません。どの仕事を任され、どんな経験を積み、管理職候補として声をかけられるか。そうしたキャリアの積み重ねも、将来の収入と無関係ではありません。
必要なのは、子育て中の社員への配慮をなくすことではなく、配慮する側が先に答えを決めないことです。「泊まりの出張がありますが、どうしますか?」そう本人に確認し、選択肢を渡すことが、本当の意味での働きやすさにつながるのかもしれません。
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