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いつも通りお小遣いをあげようとしたら…
転機になったのは、孫娘が佐々木さんの家に遊びに来たある日のこと。その日は、いつものように一緒に昼食を食べました。帰り際、孫娘が「また来るね」と言うと、佐々木さんは財布から2,000円を取り出しました。
「これで好きなお菓子でも買いな」
孫娘は一度受け取ったものの、すぐに返しました。
「大丈夫。私、いらない」
佐々木さんは驚きました。
「どうして?」
「お母さんが、『おじいちゃんだって大変なんだから、簡単にお金をもらっちゃだめ』って言ってた」
佐々木さんは、一瞬言葉に詰まりました。
「お母さん、そんなこと言ったのか」
「うん。おじいちゃんたちは“年金”で暮らしているんだからって」
孫娘に悪気はありません。ただ、佐々木さんにとっては、聞かれたくなかった言葉でした。これまで、娘から「無理しなくていい」と言われても、あまり気にしていませんでした。自分の生活が苦しいことを、孫には知られたくなかったのです。
「大丈夫だよ。おじいちゃん、ちゃんとお金あるから」
そう答えましたが、孫娘は納得した様子ではありませんでした。
その日の夜、佐々木さんは娘に電話をしました。
「何で、あんなことを言ったのか?」
「あの子も分別のわかる年齢なんだから、現実を知ってほしかったの」
娘は何度も「自分たちの生活を優先して」と伝えていました。見栄を張り続ける親の姿を見ていられなかったのです。
「俺は孫にいいところを見せたいだけなんだよ」と言うと、娘は少し間を置いて、「それは分かってる。でも、あの子にはあの子なりに、おじいちゃん孝行を考えてほしいの」と返しました。
数日後、孫娘から電話がかかってきました。
「おじいちゃん、今度遊びに行っていい?」
「もちろん。いつでもおいで」
「じゃあ、今度は私がお菓子持っていくから、一緒に食べよう」
そんなやり取りに、これまで見栄を張っていたことが滑稽に思えてきたといいます。
厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況』によると、高齢者世帯の平均所得金額は336.1万円で、総所得の61.3%を公的年金・恩給が占めています。公的年金を受給する高齢者世帯の41.3%が「収入の100%が年金・恩給」という状況です。さらに、高齢者世帯の52.1%が生活意識を「苦しい」と回答しており、受給額だけではゆとりのある暮らしを維持するのが難しい現実が浮き彫りとなっています。
現役時代に高収入だったとしても、リタイア後の収入格差や生活水準の見直しに直面する人は少なくありません。見栄を張らずに家族と家計の状況を共有し、無理のない交流を心がけることが大切です。