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定年後「することがない…」と再就職も考えたが
「会社を辞めた翌朝も、いつもの時間に目が覚めました」
東京都内に住む小林浩さん(65歳・仮名)。40年以上会社員として働き、65歳で完全リタイアしました。現在は月17万円ほどの年金で暮らしています。
現役時代は、朝6時に起きて身支度を整え、決まった時間の電車に乗る生活でした。定年後も体内時計は変わりません。ところが、起きたあとに急いで出かける必要はありません。最初の数週間は、その時間を持て余しました。
「新聞を読んで、テレビを見ていると午前中が終わる。これでいいのかなと思いました」
総務省『労働力調査(2025年平均)』によると、65〜69歳の就業率は54.5%に達しており、65歳を過ぎても2人に1人以上が働き続けているのが現状です。このように同世代の多くが働き続ける中で、完全リタイアを選択した人が急に訪れた空白の時間や社会との接点の減少に戸惑い、焦りを抱くケースは少なくありません。
小林さんも例外ではなく、手持ち無沙汰な時間の過ごし方に頭を悩ませていました。再就職について考えた時期もありました。ただ、生活費のために急いで働かなければならない状況ではありません。
「現役時代、それなりに真面目に貯金をしてきたので、お金に不安はありません。貯金? ……2,000万円以上はあると思います」
しかし、時間を持て余すなか、「このような生活でいいのか?」と謎の焦りが生じたといいます。そこで、まず朝の時間を外で過ごしてみることにしました。
始めたのは、近所を歩くことです。朝6時半ごろに家を出て、30分ほど歩きます。現役時代なら、駅へ向かうために通り過ぎていた道です。歩くようになると、近所にある公園や商店の様子にも目が向くようになりました。散歩の後は、駅前の喫茶店に立ち寄ります。
「10年前くらいにオープンしたところで、ずっと気になっていたんです。ただ忙しい朝の時間帯に寄ることもできず、夜帰ってくるころには閉まっているので……」
心地よいBGMのなか、美味しいコーヒーを飲みながら、読書を楽しむ――何ともいえない贅沢な時間です。この生活を続けるうちに、小林さんは図書館にも足を運ぶようになりました。以前から本を読むことは好きでしたが、仕事がある日は帰宅後に読む気力が残らないことも多かったといいます。
「大体、1週間で単行本を3冊くらい読むペースですね。現役時代は1年で1冊読むか、読まないかだったのに。自分でもびっくりです」