「長生きすれば絶対に得」年金受給を3年繰り下げ〈月15万円〉に増額を決意

元大手メーカー勤務のアキラさん(仮名・70歳)は現在、郊外のアパートで一人暮らししています。

遡ること5年前。65歳で定年を迎えたアキラさんの手元に届いた「ねんきん定期便」には、受給見込み額として年額約144万円(月額換算で約12万円)と記載されていました。

世間では「繰下げ受給をしてもらえる年金を増やすのが一番得」と盛んに叫ばれています。役所の窓口でも「繰り下げれば1ヵ月ごとに0.7%増額しますよ」と勧められ、アキラさんは心を決めました。

68歳になるまで受給開始を3年間繰り下げて、月額約15万円(年額約180万円)まで増やしてから受け取ろうと考えたのです。

手取り額が増えれば老後も安心であり、長生きするほど絶対に得になると信じて疑わなかったアキラさんは、意気揚々と受給開始の先送りを決断しました。

「なぜこんなに高いんだ…」退院時の会計窓口で絶句

想定外の事態に直面したのは、狙い通りに月額15万円の年金を受け取り始めてから2年が経ち、70歳になったばかりのある日のことです。アキラさんは突如として体調を崩し、急きょ入院することになりました。

幸いなことに、命に別状はなく無事に退院の日を迎えましたが、会計窓口で提示された医療費の請求書を見て言葉を失います。

「どうしてこんなに高いんだ……。年金を増額して得したはずなのに」

年金を増やし、手取りも多くなって得をしたはずだと信じていたアキラさんは激しく動揺しました。かつて同じ病気で入院した同い年の友人から聞いていた金額よりも、明らかに自己負担額が跳ね上がっていたのです。

なぜ、年金受給額を増やしたアキラさんの医療費が、高額になってしまったのでしょうか。そこには、年金の額面と社会保障制度にまつわる落とし穴がありました。