直近の投資市場においては、米国株が停滞する一方で「新興国株」が上昇する現象が起きています。しかし、これは新興国全体の景気が上向いているわけではなく、特定の半導体大手3社に依存した“歪な構造”が最大の要因です。本記事では、YouTubeチャンネル登録者数40万人超の人気FPである鳥海翔氏が、新興国株が急騰している本当の理由と、現在の市場環境に応じた「全世界株式」が今後描く5つのシナリオについて解説します。
年初来リターンは20%超だが…「新興国インデックス」が急騰している“本当の理由”【FPが解説】
長期運用は米国株が圧勝も…直近は「新興国株」が躍進
全世界株式の投資判断を行うにあたり、直近の市場動向には“ある変化”が起きています。少し前までは「米国株が最強である」と語られ、成長性の乏しい他の先進国や新興国は米国の足を引っ張っているにすぎないという見方が大半を占めていました。
しかし、直近の騰落率データを比較すると、短期的な局面では「米国株の停滞」と「新興国の躍進」が顕著に現れています。
直近3ヵ月のパフォーマンスでは、米国株がプラス4.18%であるのに対し、新興国株はプラス4.82%を記録しています。年初来の騰落率にいたっては、米国株がプラス9.79%に留まる一方、新興国株はプラス20.04%という驚異的なリターンを達成しています。直近1年の推移を見ても、新興国株が最も高い成長を示し、米国株のパフォーマンスを下回らせています。
ただし、投資期間を5年や10年という長期のスパンに延ばすと、このパワーバランスは完全に逆転します。長期運用におけるリターンは米国株が圧倒的に強く、新興国株は最も低いパフォーマンスとなっています。なお、全世界株式は、どの期間で比較してもトップに躍り出ることはないものの、常に中間の安定した位置を維持する傾向があります。
この短期と長期のデータの違いがなぜ生じているのか、その背景にある具体的な原因を正しく把握することが重要です。
「半導体大手3社」が約3割を占める…新興国インデックスのいびつな実態
新興国株が直近で急激に値を上げた要因は、業種別の成長の偏りにあります。直近1年間で最も成長した業界は半導体であり、業界全体でプラス66%前後の伸びを記録しました。
一方で、最も下落した業界はソフトウェアであり、20%前後の下落を記録しています。ソフトウェア業界の低迷は、生成AIの迅速な普及によって専門知識を持たない個人でも容易にホームページやプログラムを作成できる環境が整い、ソフトウェア自体の価値が相対的に引き下げられたことが主因です。
そして、この半導体業界の大躍進の恩恵を最も強く受けたのが、新興国株式のインデックスです。新興国株は23ヵ国で構成されていますが、その中身は特定の企業に偏っています。
構成比率を確認すると、半導体製造大手の台湾のTSMCが15.46%、韓国のサムスン電子が7.2%、同じく韓国のSKハイニックスが5.57%を占めています。これら主要な半導体企業3社だけで、新興国株全体の実に28.23%という比率を占める構成になっています。
業界全体でプラス66%上昇した半導体株の恩恵を、約3割の集中投資に近い形で受け取ったことが、新興国株が急上昇した最大の要因です。