【FPが解説】医療費の自己負担上限が上がることも…手取りと社会保障が抜け落ちた「繰下げ受給」の注意点

メディアやSNSを開けば、「何歳まで生きるなら、繰下げ受給が最も得になる」といったシミュレーションがあふれ返っています。受給額の数字が増えることばかりを追い求め、「税金」や「社会保険料」、さらに「社会保障制度」の仕組みがすっぽり抜け落としている方は多く見受けられます。

単純な足し算や掛け算をして「何歳以上生きるならこっちがお得」と計算するのは簡単です。ところが、寿命のことや、税金、社会保障の影響を他の制度と組み合わせて考えると、年金の仕組みは一気に複雑になります。

年金は一概に「何歳からもらうのが正解」と決めつけることはできません。「何歳で受け取るか」ではなく、「月いくら受け取ったらお得なのか」に視点を切り替えていく必要があります。

年金額を増額すると、税金や社会保険料の負担も増えるため、額面ほど手取りが増えないことがあります。年金は受給額だけではなく、税金や社会保険料を差し引いた後の手取りで考えることも大切です。

また、高額療養費制度では、所得によって1ヵ月の医療費の自己負担上限が変わります。2026年8月から70歳以上では住民税非課税の区分が月2万5,700円、さらに所得が低い区分が月1万5,700円、一般区分では月6万1,500円となっています。

年金額が増えることで所得区分が変われば、医療費の自己負担上限が上がることもあります。

繰上げ・繰下げ受給を考えるときは、年金の額面だけではなく、税金や社会保険料を差し引いた後の手取りも含めて考えることが大切です。ただし、手取り率が高いことと、実際に受け取れる手取り額が多いことは別です。そのため、自分の年金額や生活資金を踏まえて受給開始時期を考える必要があります。