※写真はイメージです/PIXTA
半年での退去決断と「返還金100万円」の衝撃が残した教訓
入居から半年が経過したころ、吉永さんは退去を決意します。限界を感じ、元の生活を取り戻したいと考えたためです。しかし、退去の意思を伝えた際、予期せぬ金銭的損失に直面します。
問題となったのは、1,000万円の入居一時金の返還額でした。有料老人ホームの契約には、「初期償却」と呼ばれる仕組みがあります。入居時に支払う前払金(入居一時金)のうち、あらかじめ定められた一定割合が初期償却され、その部分は退去時などの返還対象から除外されます。
吉永さんの契約では、初期償却率が30%に設定されていました。さらに、前払金には償却期間が定められており、契約終了時にはその期間に応じて返還額が計算されます。吉永さんは入居から半年で退去したものの、初期償却分などが返還対象とならなかったため、返還された金額は約100万円にとどまりました。結果として、約900万円が返還されないことになったのです。
「半年しか過ごしていないのに、900万円近くが戻らないことがわかって……衝撃でした」
契約時、重要事項説明書には返還金の計算式が明記されていましたが、吉永さんは内容を詳細に確認しないまま署名捺印を行っていました。
厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営指導指針」や老人福祉法の規定では、入居後3カ月以内のクーリング・オフに類似した「短期解約時の返還金規定」が整備されています。しかし、3カ月を超えた場合の返還金算定基礎や初期償却の割合は事業者ごとに異なり、短期間の退去であってもまとまった金額が償却される仕組みです。
「高額な勉強代になりましたが、契約書を細部まで読み込む重要性を痛感しました」
吉永さんのような失敗を防ぐには、パンフレットの説明だけに頼らず、契約書の「返還金規定」や「初期償却率」を徹底的に確認しなければなりません。
また、入居前に体験入居(ショートステイ)を利用することも有効です。数日間生活することで、施設の雰囲気、食事内容、他の入居者との関係性、管理規約の厳しさを事前に把握できます。